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岸田國士の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作3選

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今回は岸田國士の作品などのスポットをあてて紹介していきます。

岸田國士の作品の特徴及び評価

近代日本を代表する演劇作家・小説家・翻訳家の岸田國士。1917年(大正6)東京帝国大学仏文化選科に入学しました。そこで、フランス文学や近代戯曲を学びました。そして、演劇研究をするためにフランスへ渡りました。フランスでは、ジャック・コポーが主宰する小劇場ヴィユ・コロンビエ座に通うなどして、フランス演劇史の研究に没頭していきました。

フランスから帰国後、『古い玩具』『チロルの秋』などを次々に発表して日本の演劇界に新風を巻き起こしました。しかし、当初國士の戯曲は評価されませんでした。なぜなら、國士は、当時の演劇界を批判的に捉えていました。フランスで学んだ演劇観を日本の演劇界に持ち込もうと試みました。当時の演劇は、舞台上で戯曲を「再現する」ことに趣が置かれていました。その為、小説的な物語やテーマがはっきりしたものが好まれる傾向にありました。

一方、國士の作品は、その真逆をいくものでした。例えば、『チロルの秋』はふたりの男女の会話が書かれた戯曲です。恋愛描写が多く、当時の演劇の視点から見れば「何も起こらない」演劇と捉えられました。國士は、現実のみに着眼した「リアリズム」からなる舞台に対して、新たな「演劇」を提案しました。それは、初期作品の恋愛の描写に見られる「ごっこ遊び」です。そこで交わされる言葉と行為が現実を離れた別の空間を作り出します。そして、それは観客の想像力を刺激します。

國士は「ごっこ遊び」が観客に及ぼす刺激(空想性や幻想性)は、日本の演劇の世界を広げるものになると考えました。國士が追い求めたものは「純粋演劇」でした。「舞台上の登場人物」と「交わされる言葉」を根本的に見直し、舞台に新たな「現実」を作り出すことに力を尽くしました。後に劇作家・平田オリザなどが國士の作品を再評価しました。そして、國士の戯曲は現代の演出家によって今でも上演され続けています。

出版社「白水社」は岸田國士の功績を世に伝えるために「岸田國士戯曲賞」を1955年(昭和30)に設置しました。その賞は、演劇界に新風を吹き込むために新人の劇作家の奨励と育成を目的としています。

岸田國士のおすすめ代表3作品

岸田國士は生涯にわたって多数の作品を執筆しました。その中から代表作品3作を紹介します。

チロルの秋

この戯曲は、1924年(大正13)『演劇新潮』の9月号に発表されました。ヴェルサイユ講和条約の締結後、國士はオーストリアとイタリアの国境の問題を話し合う会議に通訳として参加していました。その時に得たアイディアを元に『チロルの秋』を執筆したと言われています。

あらすじ

舞台は、1920年の晩秋のイタリアとオーストリアの国境付近・チロル地方。そこにあるペンションの食堂で繰り広げられる二人の男女の物語です。長旅を続けている男・アマノ。喪服を着て死者を悼みながら旅をするエリザ。明日は、二人がペンションを発つ日。夕食後の一時を楽しむふたり。そのやり取りから愛が芽生えていきますが…。

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牛山ホテル

この作品は1929年(昭和4)に『中央公論』に発表されました。

あらすじ

作品の舞台は、インドネシア領のある港にあるホテル。女主人・牛山よねが切り盛りするホテルで繰り広げられる女と男の物語。そのホテルは、日本人の溜まり場として知られていました。その中に、ひとりの商社マンがいました。彼は、外国人の女性との結婚が取り消しなり、気落ちしていました。そんな男とある娼婦との愛を書いた戯曲です。

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暖流

1938年(昭和13)4月から9月にかけて『朝日新聞』に掲載された長編小説です。そして、映画配給会社「松竹株式会社」によって映画化されました。

あらすじ

舞台は、腐敗したある病院。その病院院長の志摩泰英が病に倒れ、1年間別荘で療養します。病院院長の息子・泰彦は、医師免許を持ちながらも「医者」としての仕事には全く興味がありません。そして、妻と競馬やゴルフなどして贅沢三昧をしていました。その間に病院の経営は悪化していきます。泰英は、病院を立て直すために若き実業家・日疋を呼び寄せます。日疋は病院立て直しに向けて、若い看護師・ぎんを通じて病院内の複雑な内情を把握していきます。ぎんは次第に日疋に淡い恋心を抱いていきます。一方、日疋は院長の娘・啓子に思いを寄せますが…。病院の権力争いを巡って繰り広げられる複雑な人間模様を描きながら、日疋とふたりの女性・ぎんと啓子の恋愛模様を軸に話は展開していきます。

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まとめ

創作活動が多岐に渡る岸田國士の作品の特徴や代表作品・3作品を紹介しました。國士の作品を味わう方法は無数にあると思います。例えば、戯曲や小説を読んで見るのも1つの方法です。また、國士の戯曲を上演しているのを観劇するのも1つの方法です。お好きな方法で岸田國士の世界を楽しんではいかがでしょうか。

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