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小栗虫太郎ってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

出典:[amazon]小栗虫太郎 名作全集: 日本文学作品全集(電子版) (小栗虫太郎文学研究会)

「完全犯罪」で彗星の如く文壇に現れた探偵小説家・推理小説家の小栗虫太郎。その後、推理小説の三大奇書に数えられる長編「黒死館殺人事件」を発表、翌年には直木賞候補に選ばれるという快進撃を成し遂げました。創作意欲は衰えることなく、作品を生涯に渡って発表し続けました。

博学を活かした独特の文体は、賛否両論にわかれました。作中ではカタカナルビや様々な文献からの引用がみられます。例えば、「黒死館殺人事件」では、館にて起こる連続殺人事件を名探偵が解決するメインストーリーに博識を活かして占星術、犯罪学、心理学、暗号学、などが組み込まれています。

また、作品中に様々なモチーフが登場し、カタカナルビにより一見読み難く思える文章も小説家・澁澤龍彦の言葉を借りれば、「大まかなリズムにのりさえすれば、あの長い分量を比較的すらすらと読み通すことさえ可能なのだ」。迷宮のような小栗虫太郎の世界を紹介します。

小栗虫太郎の生涯は

小栗虫太郎(本名・小栗栄次郎)は、1901年(明治34)東京府東京市神田旅籠町(現・東京都千代田区外神田)に生まれました。虫太郎の父は、代々続く酒問屋を営んでいました。しかし、1911年に父親が亡くなりました。虫太郎の酒問屋は、酒問屋の小田原家の分家だった為、本家から生活への援助が受けられました。そして、大黒柱を失っても暮らしに困らなかったそうです。1913年(大正2)、東京都女子高等師範学校付属小学校(現・お茶の水女子大学付属小学校)を卒業しました。また、1918年(大正7)京華中学校を卒業しました。そして、中学校卒業と同時に樋口電気商会に入社しました。その数年後には結婚し、仕事と生活とともに順風満帆に送っていました。

転機が訪れたのは1922年(大正11)でした。亡き父の財産を元手に印刷会社「四海堂印刷所」を始めました。その印刷所を営んでいる間に探偵小説に目覚め、次から次へと発表のあてもなく作品を執筆しました。その間に執筆された作品は、「或る刑事の遺書」や「源内焼六術和尚」などです。それらの作品は、あとで諸所の雑誌にて発表されました。

しかし、経営が上手くいかず、1926年(大正15)印刷場を閉めました。その後6年間は、職につかず亡き父の骨董品などを売って生活を立てていたと言われています。

一発逆転のチャンスが訪れたのは1933年(昭和8)です。この年に後に虫太郎の代表作になる「完全犯罪」を執筆しました。一か八かで面識がなかった京華中学校の先輩、甲賀三郎にその原稿を送りました。当時、甲賀三郎は江戸川乱歩などと共に日本探偵小説家の草分けとして活躍していました。

また、甲賀は新聞や週刊誌や雑誌など多方面に作品を発表していました。その彼の目に虫太郎の原稿が留まり、さらには彼の推薦状と共に大正昭和のモダニズモをリードしていた「新青年」の編集者に渡りました。

「新青年」は、いわゆる娯楽総合雑誌です。しかし、日本の探偵小説や推理小説を語る時には、外せない雑誌です。それは、日本の推理小説の開祖、江戸川乱歩や横溝正史などの発表の場になっていました。また、広く探偵小説を紹介していました。「新青年」に横溝正史の作品の記載が決まっていましたが、結核の症状が悪化したため、執筆が不可能になりました。

そして、ピンチヒッターとして「完全犯罪」が記載されました。これが作家としてのデビュー作品となりました。翌年には、同雑誌に日本探偵小説史上の「三大奇書」に数えられる長編、「黒死館殺人事件」を発表しました。そして、1936年(昭和11)直木賞候補になりました。

その後は、陸軍報道班員としてマレーに渡りました。また、マレーの秘密結社をテーマにした作品を次々と発表しました。その辺りから、生来の体の衰弱が進行し始めました。

終戦前には、執筆業を傍らに置いて、菊芋から果糖をとる事業を長野で起業しました。そして、そこに疎開しました。

終戦後は、横溝との往復書簡から窺えるように長編作品に意欲的に取り組みたいと考えていました。そして、長編小説「悪霊」を執筆していました。その矢先、1946年2月に脳溢血で倒れます。享年44歳でした。

性格を物語るエピソードは?

●ひどく雷が嫌いで、雷雨がいつ来るか予測する能力があったと言われています。

●早くに亡くした父親に対して、あまり良く思っていなかった。そのため多数の作品に父親殺しのモチーフを登場させたと言われています。

死因について

亡くなる数日前まで、闇酒を飲んでいたことから死因は、メチルアルコール中毒ではないかと噂が流れました。それに対して遺族は、虫太郎の死因は脳溢血だと強く主張しました。

まとめ

小栗虫太郎の生涯やエピソードを紹介しました。人生の前半は、小説と無縁の人生を送っていた虫太郎。印刷会社を経営中に探偵小説に目覚め、そして唯一無二の小説をこの世に残して去りました。一見穿ち難い小栗虫太郎の作品ですが、それを読み進めるうちに彼の文体に慣れて、ドップリ「彼の世界」に浸れることでしょう。

最近、新たに「亜細亜の旗」が小栗の作品だと確認されました。まだまだ小栗虫太郎から目が離せません。

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