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アルベール・カミュの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作4選

出典:[amazon]アルベール・カミュ―ある一生〈上巻〉

アルベール・カミュ20世紀に生まれ、若くしてノーベル賞を得ながらも早くに亡くなった小説家です。『ペスト』『異邦人』で国際的な人気を得て、現在も広く読まれる名作を多く世に送りました。昨今のコロナウイルスの影響で注目されていることもあり、今回はカミュのおすすめ代表作をご紹介します。

アルベール・カミュの作品の特徴及び評価

アルベール・カミュは20世紀の小説家、また哲学家でもありました。彼自身の作品にみられるテーマは一貫して「不条理」です。病弱な自身が経験した貧しい幼少や戦争に揺れるフランスに生きた中での経験から、人の非力さや弱さと団結力に対する深い考えがみられます。

新古典派といわれるそのはっきりとした文体とともに悲劇を扱うことも多いので、カミュの作品には共通してほの暗さを感じさせる特色があります。登場人物それぞれの葛藤や生き方がリアルながら明確な躍動感をもって描かれている点は、カミュの作品における特色といえるでしょう。

アルベール・カミュおすすめ代表作4選

ここではカミュの遺した名作で有名かつ読みやすいものをご紹介します。自身の体験からインスピレーションを受けたものが多く、その作品自体にカミュの「不条理」の哲学が影のように、その明晰な文章の中に見えてきます。

異邦人

カミュの名前を一挙に有名作家に押し上げたのが『異邦人』です。1942年、この作品が発表された同年に『シシュポスの神話』という随筆もあります。両作ともにカミュの「不条理」の哲学が強く浮き出た本として知られています。

「太陽がまぶしかったから。」主人公ムルソーはアラブ人とのトラブルに巻き込まれて一人を殺めます。裁判で殺害の動機を聞かれ、この台詞を口にしました。

アルジェリアで働くムルソーは夏のある日に、母の死を受け取るところから物語は始まります。印象に残るのは、母への追悼は不思議なほどなく、億劫とさえ思ってしまう冷静さです。知り合った女性と関係を持ったり、海水浴に行って楽しんだりと、常識とは全く別のところにある何かにムルソーは操られています。

ある時、隣人であるレエモンの痴話げんかに巻き込まれます。アラビア人に目をつけられた彼は、協力を仰いでピストルを預けていました。その後、一人のアラビア人と対峙した彼は引き金を引いて殺人を犯してしまうのでした…

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ペスト

医師であるベルナール・リウーはアルジェリアのオランで働く医師でした。特別なものなど何もないこの街は突如、ネズミの死骸であふれかえってしまいます。ペストが訪れてからこの街は隔離され、町に残されたリウーはこの大きな疫災に立ち向かうべく、市民と団結し立ち向かう様子が描かれています。
ペストはカミュの第二作目の小説です。フランス語圏のみならず世界中に爆発的人気を以て受け入れられ、『異邦人』以来の傑作として喝采を浴びます。
異常な熱狂を博した理由は、極めて現実的な文章の中にはっきりと意識されて、ペストのモチーフに第二次世界大戦があったことです。そればかりでなく人間の孤独な弱さや病気、政治や全体主義といった一人ではあらがえない「不条理」の哲学がカミュの主題だったのでしょう。戦火はいまだ絶えることなく、場所も時も超えて、普遍的なメッセージを読者に伝えるべく意図して描いたことをうかがわせます。

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カリギュラ


世に知られる狂った悲運のローマ皇帝、カリギュラをテーマにしている戯曲です。優れ、人徳あるカリギュラは3代ローマ皇帝として名声を集めていました。しかし最愛の妹で愛人でもあったユリアを失い、発狂してしまいます。月に魅入られ、神の代行者を名乗って暴虐の限りを尽くします。名声は地に落ち、恨みを持つ者たちの手によって殺害されて生涯の幕を下ろします。

本作はカミュがアルジェリアにいたころから温められていた作品で、先に挙げた『異邦人』とエッセイ『シシュポスの神話』に並んで、カミュの哲学を示す代表作です。カリギュラは作中で死をテーマにしてコンクールを主催します。カミュは広く知られる逸話の中で、自身の思い描く死、つまり「不条理」の哲学に思いをはせていたのでしょう。

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転落

『転落』は『ペスト』とも『異邦人』とも異なる趣旨の文章で、哲学と無関係のキリスト教色の強い一作です。華々しい成功を修めた弁護士クラマンスが、文字通り社会的に『転落』する話です。アムステルダムにある場末のバーに一人腰掛け、現在のクラマンスが客に向かって話して行く構成になっています。一見すると転落の経緯を告白する話なのかと思いきや、弁護士をしていたのは人を裁くことができるから、といいます。人生の絶頂にありながらどうして落ちぶれたのか、彼の前に現れる恐怖は何だったのか。形を変えて現れるこの恐怖に、クラマンスは今になってもなお、翻弄されてしまうのでした。

本作は巧妙に隠されながらも、聖書のアンチテーゼとして描かれています。彼自身の名前であるジャン・バティスト・クラマンスは洗礼者ヨハネに由来し、クラマンスは「荒野に叫ぶ」という意味です。クラマンスは人を裁こうとしますが、聖書の教えの中で人が人を裁くことを戒めています。彼の感じた恐怖は、こうした従来の在り方に背いたことにあったのかもしれませんね。

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まとめ

今回はアルベール・カミュを紹介していきました。ノーベル文学賞受賞の栄誉を戴きながら早くに亡くなったカミュの生涯には、いつも「不条理」に対する思いがありました。それは戦争や疫病であったり、よりミクロな個人の死や信仰であったりと様々ですが、人々が手を取ってこうした大きな「不条理」に立ち向かうことを、カミュの戦い抜いた人生の中で答えとしたように思います。

カミュの著作は現代の文学らしく短めのものでありながらあっさりとしているものが多いです。こちらもkindleなど電子化されているものも多いので、まずは上に挙げた代表作を一つ、手に取ってみてはいかがでしょうか。

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