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種田山頭火の作品の特徴及び評価。句集「草木塔」よりおすすめ俳句35選

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「分けいっても分けいっても青い山」の俳句で知られる種田山頭火。生涯にわたり酒と旅と俳句を愛し、放浪の人生を送った山頭火は、形式に囚われない自由な作風で多くの作品を残しました。その作品からは山頭火の素直な感情が滲み出ており、短い句の中に人生が読み取れます。40代で出家し、全国各地を渡り歩いた山頭火の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、種田山頭火の作品の特徴や、句集「草木塔」のなかからおすすめ作品をご紹介します。

種田山頭火の作品の特徴と評価

種田山頭火といえば、雲水姿(うんすい)をイメージする方もいるかもしれません。しかし山頭火が雲水姿で全国行脚したのは、人生の後半になってからです。山頭火は15歳のころから俳句に親しみ、生来の鋭敏な感性のため比較的若くしてその才能が認められました。荻原井泉水(せいせんすい)が主催する「層雲」に俳句を投稿してからその実力が認められるようになり、荻原門下の尾崎方哉(ほうさい)と共に並び称されるまでになります。

ちなみに「山頭火」の由来は、納音(なっちん)と呼ばれる、六十干支を陰陽五行説や中国古代の音韻理論を応用して「木・火・土・金・水」の五行に分けて、さらに形容詞をつけて30種類に分類したものの一つです。種田山頭火の納音は「山頭火」ではなく「楊柳木(ようりゅうもく)」だったそうですが、本人は「山頭火」が気に入りこちらが俳号となりました。

山頭火の作品の特徴は「五・七・五」という定型に囚われない、「自由律俳句」と呼ばれるもので、短い句のなかに「一瞬の心の風景」を表現した作品を多く残しました。

例えば山頭火の句には、
「まっすぐな道でさみしい」
というものがあります。

一般的な俳句の概念からすると驚くような作品ですが、これを詠んだ山頭火の瞬間的な心象風景が読む人に突き刺さる句ではないでしょうか。

その他にも、
「あたたかい飯が在る」
という句もあります。ここまで来ると「はたしてこれは俳句なのか?」という疑問が出ますが、種田山頭火の作品の特徴とはこういうものだと理解するのが良いと思います。

また、お酒好きだった山頭火はお酒に関する句だけで1000句以上もあるそうで、
「一杯やりたい夕焼けの空」というユニークな句も詠んでいます。

山頭火の作品が俳句かどうかは意見が別れると思いますが、山頭火の作品の楽しみは言葉を通して「山頭火を知る」ことにあるのではないでしょうか。他の作家のように「〜文学賞を受賞」という功績はありませんが、山頭火が残した作品とその衝撃は、今も多くの人に影響を与え続けています。

句集「草木塔(そうもくとう)」(※1)について

生涯にわたり膨大な数の俳句を残した山頭火。その数は8万を超えるとも言われています。「草木塔」は山頭火自信が晩年に居を構えた「一草庵」にて自選した句集で、昭和15年、八雲書林より刊行されました。「鉢の子」から始まり「鴉(からす)」までで構成された山頭火句集の集大成です。今回はそのなかから、おすすめの俳句をご紹介します。

※1、草木塔とは、草木に感謝し成長を願って建てられた石碑のことです。

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鉢の子

「草木塔」最初の句集です。
・木の葉散る歩きつめる
昭和2年〜3年にかけて山陰・山陽・四国九州を旅していたころの作品です。

・木の芽草の芽歩き続ける

・また見ることもない山が遠ざかる
2度と訪れることのないであろう景色を詠んだ句で、無常感が表現されています。

・すすきのひかりさえぎるものなし

・分け入れば水音

山行水行

・待つでも待たぬでもない雑草の月明かり

・手がとどくいちじくのうれざま

・一つもいで御飯にしよう

・月夜、あるだけの米をとぐ

・ふくろうはふくろうでわたしはわたしでねむれない

旅から旅へ

・わかれてきた道がまっすぐ

・すわれば風がある秋の雑草

・よい道がよい建物へ、焼場です

・いま写します紅葉が散ります

・さて、どちらへ行こう風が吹く

雑草風景

・だれもこないとうがらし赤うなる

・病めば梅ぼしのあかさ

・お日様のぞくとすやすや寝顔

・枯木に鴉が、お正月もすみました

・ひっそり咲いて散ります

柿の葉

・あたたかく草の枯れているなり

・ふるさとはあの山なみの雪のかがやく

・たふとさはましろなる鶏

・また一枚ぬぎすてる旅から旅

・山のふかさはみな芽吹く

銃後

・ひつそりとして八ツ手花咲く

・音は並んで日の丸はたたく

・ぢつと瞳が瞳に喰い入る瞳

・お骨声なく水のうへをゆく

・案山子もがつちり日の丸ふつてゐる

・水のうまさを蛙鳴く

・山からしたたる水である

・風のなか米もらいに行く

・つゆけくも露草の花の

・しみじみしづかな机の塵

まとめ

いかがでしたか?今回は種田山頭火の作品の特徴やおすすめ作品をご紹介しました。
俳句は「五・七・五」を超えた自由な形式や、季語が無い作品もあるので興味深かったのではないでしょうか?。現代の感覚からすると「ツイッターのつぶやき」に近い感覚を覚えた方もいるかもしれません。今回ご紹介した作品は山頭火の作品のごく一部ですので、興味があればぜひ他の俳句を読んでみてください。きっと、ご自分の感性にあった作品に出会えると思いますよ。

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