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代表作「夫婦善哉」がヒットし「オダサク」の愛称で親しまれた織田作之助。その人生は33年というものでしたが、親しみのある文体や当時の人々の生活を表した作品は、今も多くの人に愛されています。太宰治や坂口安吾らと共に「無頼派」(新戯作派)とされる織田作之助の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は作品の特徴や評価と、おすすめ代表作をご紹介します。
織田作之助の作品の特徴と評価
織田作之助の作品は大阪の庶民の生活を通して人間の滑稽さや人情、悲しみを軽快な文体で語ります。また織田作之助は「無頼派」に属する作家として知られていますが、無頼派の特徴は「反俗・反権威・反道徳的言動で時代を象徴することになった一群の作家」とされています。こうした態度には当時の文壇の主流だった「リアリズムへの批判」が含まれているようで、リアリズム文学の巨匠・志賀直哉に対しての太宰の批判などがその一例です。
「無頼派」は同人誌などを刊行しておらず、派閥というよりは「上記のような態度を持った作家を指す」という理解の方が正解に近いようです。そういう意味で、織田作之助の作風は無頼派に属していると言えるのではないでしょうか。
また織田作之助の作風は「前期」「中期」「後期」に分けられており、それぞれ「戦前」「戦時下」「戦後」の時代背景と重ねられて論じられることもあるようです。「夫婦善哉」は初期作品とされ、小説の方法についての試行錯誤はこの作品以降あまりみられないとする見方もあります。
33歳という若さでこの世を去った織田作之助ですが、数多くの作品を残し後世の作家に大きな影響を与えました。その功績を讃え、生誕70周年を記念した1983年以降「織田作之助賞」が創設されています。
おすすめ代表作
織田作之助のおすすめ代表作を3作品ご紹介します。どれも読みやすい作品ですので、まだ読んだことのない方は、どれか一つでもぜひ読んでみてください。
夫婦善哉(めおとぜんざい)
1940年、雑誌「海風」に掲載された作品で、織田作之助5作目の小説です。この作品は改造社の第1回文芸推薦作品に選ばれ、織田作之助の出世作とされています。大正から昭和の大阪を舞台に、喧嘩を繰り返しながらも仲睦まじく生きる夫婦の姿を描く温かい作品となっています。独特の言い回しや表現は、織田が敬愛していた井原西鶴から影響を受けているそうです。
作品のタイトルの「夫婦善哉」は大阪の法善寺横丁に実際にあるぜんざいの店「めをとぜんざい」から取られています。また作中の夫婦は、織田作之助の姉・千代とその夫がモチーフとなっています。多くの人々から支持され、この作品によって織田は戦後流行作家の第1号となり、これまでも何度もテレビドラマとしてリメイクされています。
2007(平成19)年に続編の原稿が見つかり、発表から67年の月日を経て完全版「夫婦善哉」が出版されました。後編は別府が舞台となっています。
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天衣無縫
都出政子の視点から語られる夫婦の物語です。簡単なあらすじは以下の通りとなっています。
「ちっとも綺麗ではない」政子はお見合いで軽部清正と結婚しますが、夫の清正は帝大出身でありながら「風采のあがらない」人物です。清正は誰にでもお金を貸してしまい、仕事でも頼まれたことを何でも引き受けてしまうお人好しでした。
そんな二人にもやがて子供ができ生活に必要なお金が増えますが、いっこうに清正の給料はあがりません。それもそのはずで、のんきな清正はたびたび出勤記録を押し忘れ、会社から無断欠勤扱いをされていたのでした。それについて政子は清正にキツく問いただすと、「そんなことまでいちいち気をつけて偉くならんといかんのか」といつにない怖い顔で政子をにらめつけます。
一読すると政子の「グチ」と読めるかもしれませんが、実は天衣無縫な夫・清正への愛情の裏返しを表現した作品なのかもしれません。
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青春の逆説
戦時中に執筆された長編小説で、織田作之助後期の代表作とされています。当時は政治的情勢から発禁となりました。自己意識過剰な主人公・豹一の人生の葛藤を描く作品です。強すぎる自己意識と虚栄心により、不器用な青春時代を過ごす豹一。しかし風邪をひいたことをきっかけに、看病してくれた女優と親しくなります。
やがて精神的にも成長した豹一は遊郭にも出かけ、現実を少しずつ受け入れるようになります。そんな豹一も結婚して子供ができると、それまでの自分の価値観が一変します。果たして豹一がたどり着いた人生の答えとは・・・。
自伝的小説との見方がありますが、友人で作家の青山光二は「オダサクは決して毛利豹一のような美少年ではなかった」と述べています。青春時代に読むのも良いですし、年齢を重ねてから読むのも良いかもしれません。極端なキャラクターとして描かれてる豹一ですが、どこかに読む人と重なる部分があるのではないでしょうか。
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まとめ
いかがでしたか。今回は織田作之助の作品の特徴とおすすめ代表作をご紹介しました。織田作之助の作品は人間が生きる上での悲しみや喜びといった、ありのままの姿を表現しているのではないかと思います。今回ご紹介した作品以外にも「競馬」といった日常の話から「猿飛佐助」のような時代小説など、興味深い作品を多く残していますので、これを機会にぜひ織田作品を読んでみてください。