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横光利一の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選。

出典:[amazon]横光利一 名作全集: 日本文学作品全集(電子版) (横光利一文学研究会)

日本の文壇史上で「小説の神様」と呼ばれた人物が2人います。1人は「暗夜行路」で知られる志賀直哉。もう1人が今回ご紹介する横光利一です。志賀直哉は横光を認めていなかったようですが、横光の作品は当時の若者たちから絶大な支持を得ました。川端康成とともに新感覚派という新しいジャンルを生み出した横光利一の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、横光利一の作品の特徴とおすすめ代表作5作をご紹介します。

横光利一の作品の特徴や評価は?

「蠅」や「日輪」を発表し、新進気鋭の作家として登場した横光利一。暗喩や直喩、擬人法を巧みに用いた横光の作品は、川端康成とともに「新感覚派」と呼ばれています。「新感覚派」の作品は日本の文学史上において、プロレタリア文学に代表される「リアリズム文学」と双璧をなすジャンルとして発展しました。

新感覚派の作品は、当時のヨーロッパで流行していた「ダダイズム」や未来主義(未来派)や表現主義の技法をいち早く取り入れ、横光や川端はそれまでの「リアリズム文学」からの脱却を試みました。

そういう意味で横光作品には実験的な作品が多く、代表作「機械」は、「私」という視点も客観視することから4人称小説として知られています。この手法について作家の小林秀雄は「外国にも例がないほど新しい手法である」と述べています。

「小説の神様」とまで言われた横光利一でしたが、その評価は賛否分かれています。文学者として太平洋戦争に加担したことを糾弾する人がいる一方で、横光は「東洋精神による西洋近代の超克」を企てた人物であると評価する人もいます。いずれにしても、横光の作品や思想が、のちの文壇に大きな影響を与えたのは間違いないでしょう。

横光利一のおすすめ代表作5選

横光利一のおすすめ作品をご紹介します。どれも代表的な作品ばかりですので、比較的読みやすいと思います。

1923年(大正12)に「文藝春秋」に掲載された作品です。「日輪」とともに横光の出世作です。息子の危篤の連絡を受けた母親や駆け落ちした恋人二人、大金を稼いだ田舎紳士など、それぞれ異なる事情を抱えた人々が一つの馬車に乗ります。馭者(ぎょしゃ)の合図とともに馬車が出発しますが、しばらくすると馭者が居眠りをしてしまい、馬車もろとも崖から転落してしまいます。全員死んでしまったかと思いきや、馬車のなかにいた一匹の「蠅」だけが生き残り、おちゆく馬車の光景を眺めていました・・・。

一つの悲劇的状況を「蠅」の視点から見つめた実験的な作品であり、同時に命の無常を表した作品です。また、横光の師匠であった菊池寛はこの作品について「映画劇としての面白さがある」と評しています。

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頭ならびに腹

1924年(大正13年)、川端康成らと立ち上げた「文藝時代」に掲載された作品です。比喩や擬人法を多用し、この作品によって横光は「新感覚派」と呼ばれるようになりました。
冒頭の部分がとくに有名で、次のような文章で始まります。

「真昼である。特別急行列車は満員のまま全速力で駆けていた。沿線の小駅は石のように黙殺された」

擬人法や比喩を用いた独特な表現が、発表当時話題となり横光は気鋭の作家として認知されるようになります。

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日輪

1923年(大正12)、雑誌「新小説」で発表された中編小説です。邪馬台国の女王卑弥呼が主人公です。歴史小説ではなく、卑弥呼をめぐる愛憎物語であり、国と国との壮大な戦いを描いた作品です。視覚的な作品であり、のちに映画化されました。文体も特徴的で、心情の説明が少なく、セリフと状況描写で描かれた戯曲のような作品です。フランスの作家フローベールから影響を受けて書かれたと言われています。「蠅」と同様、横光初期の代表作です。

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機械


1930年(昭和5年)に雑誌「改造」に掲載された横光の短編小説です。横光作品のなかでも心理主義的技法を用いた実験的作品であり、中期の代表作とされています。「私」を俯瞰する複雑な技法は「4人称小説」と言われており、また段落や句読点が最小限に抑えられた文体は当時の人々を驚かせました。

「機械」はジェームス・ジョイスや「失われた時を求めて」で有名なマルセル・プルーストなどから刺激を受けて書かれた作品とされ、川端康成はこの作品を「ジャン・コクトーの『恐るべき子供たち』のようだ」と論じました。またフランスの作家で哲学者のサルトルも「機械」を賞賛したと言われています。

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春は馬車に乗って

1926年(大正15年)、雑誌「女性」に掲載された短編小説です。若くして結核で亡くなった横光の最初の妻・キミをモチーフに、横光自身の体験を元に書かれた現在でも人気のある作品です。亡き妻への鎮魂的作品と言われています。ラストのスイートピーを抱きしめるシーンはとても感動的です。

妻・キミを題材にした作品は他にもあり、「蛾はどこにでもいる」と「花園の思想」を合わせて「亡妻(なきつま)もの」3部作と称されています。不遜な雰囲気が漂う横光でしたが、この作品を読むと横光の優しさや思いやりが伝わってきます。

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まとめ

いかがでしたか?今回は横光利一の作品の特徴やおすすめ代表作をご紹介しました。とくに「蠅」は短い作品ながらも横光の初期を代表する作品で、発表当初から好評を博しました。中編や長編を読むのが苦手な方は、まずは「蠅」を読んでみて横光作品の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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