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菊池寛の作品を読んだことがない方でも、学校の授業などで1度は名前を聞いたことのある人も多いと思います。菊池寛は明治・大正・昭和にかけて活躍した作家で、とても大胆な人物として知られています。しかしその作品は、人間の現実を描く繊細な作風と、大衆を魅了する面白さがあふれています。日本の文壇だけではなく映画制作にも関わり、時代を彩った菊池寛の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は菊池寛の作品の特徴や、おすすめ代表作をご紹介します。
菊池寛の作品の特徴と評価
菊池寛は、戯曲や純文学、歴史小説、そして大衆文学といった幅広いジャンルを書いたことで知られています。菊池寛作品の幅の広さの源は、興味のあるジャンルを片っ端から読んだ、幼いころの経験からきているのかもしれません。また菊池寛は、人生経験や現実主義、または人生観といったものを作品のテーマにしました。
さまざまなジャンルを書いた菊池寛ですが、その内容は常に大衆を意識した作風となっていて、その結果どの作品も読みやすいものとなっています。これは、菊池寛自身が「多くの人に読まれることが大事である」という意図を持って書いたことに由来します。そして菊池寛の思惑通りに「真珠夫人」をはじめとする、いわゆる通俗小説は大ヒットとなります。
出版社の文藝春秋を設立し、若手作家の育成や援助を惜しまなかった菊池寛は、芥川賞や直木賞を設立し日本の文学界に多大な貢献をしました。存命中は「文壇の大御所」と称され慕われていた菊池寛は、現代においてもなお魅力あふれる人物として多くの読者に愛されています。
菊池寛のおすすめ代表作6選
菊池寛のおすすめ代表作をご紹介します。セレクトした作品のなかには、珍しい作品もありますので、ぜひ読んでみてください。
父帰る
1917年、菊池寛が29歳のときに第4次「新思潮」に発表した、全1幕からなる戯曲です。「父帰る」はまさに菊池寛を代表する作品と言えるでしょう。発表された当初はあまり人気が出ませんでしたが、1920年、歌舞伎役者の2代目市川猿之助が舞台を行ったことで人気作となりました。3度映画化されていて、作品が持つテーマは時代を超えて人々の心に訴えかけます。
家族を捨てて、20年ぶりに帰宅した「父」。一方、父がいなくなり家族を支えるために10歳から懸命に働いた長男の賢一郎。賢一郎の父を恨む気持ちと、父の帰りを歓迎する家族たちとの葛藤が、読む人を物語へ引き込みます。
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極楽
短編小説です。物語のあらすじは、このようなものです。
宗兵衛に先立たれた老婆おかんの物語です。老婆おかんも死去し、いよいよ宗兵衛に会えると思いながら長い長い道のりを歩き、極楽へたどり着きます。たどり着いた極楽は、見たことがないほどに美しく、絢爛豪華(けんらんごうか)でした。極楽で宗兵衛に出会えたおかんでしたが、宗兵衛はただ黙ってじっと座り続け、極楽を眺めてるばかりでした。やがて10年、20年と経ちますが宗兵衛は、やはりただ座ったまま極楽を眺めるばかりです。おかんが話しかけても投げやりな返事が返ってきます。しかし、ただ一つだけ2人の間で盛り上がる話がありました。それは・・・。
菊池寛のユーモアあふれる作品です。
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真珠夫人
1920年に毎日新聞の連載小説として執筆された作品です。「父帰る」同様、たびたび映画化され、2000年代のドラマでも大ヒットしました。いわゆる通俗小説で、大衆文学として広く読まれている作品で、新しい女性の生き方を描いたこの作品は、のちの婦人雑誌ブームに影響を与えたと言われています。
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恩讐(おんしゅう)の彼方(かなた)に
1919年、中央公論1月号に掲載された短編小説です。翌年、菊池寛自身によって「敵討以上」(かたきうちいじょう)として戯曲化されました。30年を費やし、ノミと槌(つち)だけで青の洞門(トンネル)を開通させた実在の僧侶、禅海(ぜんかい)の話をモチーフに書かれました。作中の敵討ちの物語は、菊池寛の創作です。
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我が馬券哲学
天皇賞で優勝する馬を所有するほど、大の競馬好きだった菊池寛。この作品は(作品というより注意書きに近い)馬券を買う上での心得(教訓)が箇条書きとして書かれたものです。
例えば、次のようなものがあります(原文ママ)
一、何々がよい」と、一人これを云えば十人これを口にする。ほんとうは、一人の人気である。しかも、それが十となり百となっている。これ競馬場の人気である。
一、一日に四、五十円の損になりても、よき鑑定をなし、百四、五十円の中穴を一つ当てたる快味あれば、償うべし。※青空文庫より引用。
競馬をやらない方でも、菊池寛の競馬哲学を知ることができる楽しい作品です。
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藤十郎の恋
1919年(大正8年)に書かれた全1幕3場からなる作品で、真珠夫人と同じく新聞に連載されました。名俳優・坂田藤十郎が芝居茶屋のお梶(かじ)に、たわむれに恋をしかけます。物語が進むにつれ、藤十郎が自分をからかっていることに気がついたお梶が、毒を飲んで自害するという物語です。芸の道に執着する非道な役者魂を描いた、菊池寛ならではの悲劇です。
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まとめ
今回は菊池寛のおすすめ作品を6つご紹介しました。競馬についてまで言及しているところなどが「文壇の大御所」と言われた菊池寛の面白いところだと思います。どんなことにも自分の軸を持ち、信念を貫いた菊池寛の作品にはまだまだ興味深い作品がたくさんあります。今では、青空文庫などで手軽に読めますので、ぜひお気に入りの作品を見つけてみてください。