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レフ・トルストイの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作4選

出典:[amazon]トルストイ 聖書

レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ(1828-1910)の作品で有名なのは超大作の「アンナ・カレーニナ」や「戦争と平和」ですが、実際にしっかり読破したという方はどれぐらいいるのでしょうか。「戦争と平和」に至っては、登場人物が500人以上であり、人物関係を把握するだけでも大変です。しかし、トルストイは何も長編小説ばかりを残したわけではありません。

今回はレフ・トルストイの作品の特徴、その評価について、代表作も含め、ご紹介していきます。

レフ・トルストイの作品の特徴及び評価

トルストイ作品の特徴は、芸術性よりも宗教的要素や社会的要素に重きが置かれているという点にあります。そのため、やや難解に感じられる部分もあります。

ニコライ・ゴーゴリーの作品の特徴

トルストイ作品の特徴は自伝的要素が強い点に起因しています。

まず、トルストイ本人がロシア貴族に反発心を持っており、むしろ農民ファーストな思想であるということです。
私有財産を全否定してまで農民大衆の中に入り込もうとしていたぐらい、ロシアの広大な大地と密接な関係を持つロシアの農夫に深い愛情を持っていたのです。そのため、トルストイの小説には、必ず若い貴族の青年が農民生活の改善に乗り出し、失敗に帰するという描写が登場します。失敗を繰り返しつつも、主人公は農民の中に溶け入る望みを最後まで捨てずに持っており、これが最終的に神への信仰に変わっていくのです。農民と神がほとんど同義語化して語られるというのが、トルストイ文学の特徴なのです。

また、常に宗教的要素の絡みも登場します。というのも、トルストイ本人が原始的キリスト教的立場をとっていたからです。老年には、堕落したギリシャ正教会の無能ぶりを批判し、正教会から破門されているぐらい、明確な宗教的信仰をもっていたのです。そのため、トルストイ作品では神を心底信じている信仰者と、無神論者との対比が必ず登場してきます。どちらが正しいと明確に書かれているわけではありませんが、神を邪険に扱っていた者(とくに主人公)が最後には神を受け入れ、信者となっている姿が描き出されるパターンが多いです。そこから、トルストイがいかに宗教や神を大切にしていたかがうかがえます。

レフ・トルストイの作品の評価

トルストイ作品は、特に長編が素晴らしいと評価されることが多いですが、その他に書き溜めた短編、中編、批評、評論、論文、いずれも高い評価を得ています。駄作と言われる作品がなく、天才的な文豪だったといわれています。
人物の心情描写、風景描写、時代描写、歴史描写のいずれも優れており、抒情的な小説と評価する人も少なくありません。

ロシア文学に登場しがちな対比構造はトルストイ作品にも多く登場します。特に貴族と農民の対比はトルストイ作品の要でもあります。その他にも細々しい対比が随所に散りばめられていますが、対比が対比で終わらないのがトルストイ作品の唸れるポイントでもあります。
全てがぶつ切りなのではなく、最終的にそれら点が繋がって線となり、より壮大なものを描ききるという構造になっているのです。読んでいる最中は、様々な事象が突発的に出現しているようにも思えるため、「よくわからない」と読むのを辞めてしまう方も多いようです。しかし、そこをなんとか耐えて最後まで読み通してもらえれば、きっと予期せぬ壮大なまとめに飲み込まれ、圧倒的な読了感を得ることができます。

トルストイ作品は、150年以上を経ても色あせることなく、今なお偉大な文学作品の一つとして世界中で読み継がれています。この事実だけでも、いかにトルストイが優れた文豪だったか、また彼の作品がいかに素晴らしいものであるかは想像に難くないでしょう。

レフ・トルストイの代表作4選

ここでは、トルストイの代表作を4つ厳選してご紹介していきます。トルストイの作品というと、長編小説「アンナ・カレーニナ」、「戦争と平和」、「復活」などが有名ですが、ここでは長編小説は2つ、あとはあえて評論と短編を紹介いたします。

「戦争と平和」(1865-1869)

サマセット・モームが「すべての小説の中でもっとも偉大な作品」と絶賛したことでも知られる超大作です。第一巻から第四巻で構成されており、文庫本では7、8冊の長さにもなります。年数にして14年間分の内容が緻密に描き出されています・

時代はナポレオン戦争下。主人公はロシア貴族たちで、戦争に翻弄されながら貴族社会の興亡の中で真実の愛に目覚めていきます。

「愛とは何か?結婚とは何か?」、「名誉とは何か?」、「金とは何か?」、「人生とは何か?」様々な人生における普遍のテーマが登場人物たちの悩みとなって現れるなど、読み手の共感を得る描写も多く、人を惹きつけるテクニックも素晴らしいと言われています。

登場人物は全559人にも上り、原語のロシア語ですらかなり難しい単語が使われていることでも有名です。

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「アンナ・カレーニナ」(1873-1875)


この作品は、映画、バレエなどでも多く取り上げられています。自由奔放に生きるアンナが自分の子を全く顧みずに自滅していく様は賛否両論です。

1870年代のロシアを舞台に政府高官の妻が許されぬ恋と不倫に身を滅ぼしていく様が描かれています。

貴族として華やかな生活を送る主人公のアンナは自分ファーストで夫も子供も顧みず、自由奔放に人生を謳歌します。結果として悲惨な末路を辿ることになるのですが、ここに対比としてもう一組カップルが描かれています。そちらは中流、農民といったところで、それぞれがお互いのために生きることで最後は幸せな家庭を手にすることが描かれています。

この作品でトルストイは、人生は自分の為に生きるのではなく、人の為に生きるべきだと諭しているそうです。

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「光あるうち光の中を歩め」(1890)

題名からも分かるように、かなり宗教色の濃い短編小説です。

自分の人生を顧みた時、「素晴らしい人生だった」と思える人物はなかなかいないと言います。小説中に登場する人々は、自分のために生きる青年と神のために生きる青年の話を始めます。神のために生きた青年は、迫害を受けつつも、幸せな結婚、子育て、仕事、そのすべてを全うし、非常に満ち足りた日々を送っていました。対する自分勝手な青年は家庭を顧みず、放蕩し放題、杜撰な生活を送っていました。しかし、妻が死んだことで自分の生活、人生に深く悔恨するのでした。

「アンナ・カレーニナ」でも描かれていましたが、自分勝手に生きるのは悪であり、人の為、神の為に生きるのが人としての全うな道であるとするのがトルストイの考えなのがよく分かります。

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「芸術とは何か?」(1897-1898)


「芸術とは何か?」はトルストイの評論になります。
小説ではなく、実際に「芸術とは何か?」というテーマで論評されています。

芸術によって気持ちが人に伝わる、それは時を超えて伝えることができる唯一の手段であると力説しており、それが芸術の役目でもあるというのです。
しかし、芸術と一言で言ってもいろいろあります。中でも音楽はメッセージ性が不明瞭である点から(人の気持ちを伝える手段としての)芸術には不向きであり、絵画の方が相応しいとまで言っています。
また、ここでもキリスト教的、宗教的要素が介入した意見も混ざっています。

トルストイの芸術論が正しいとは決して言えませんが、「芸術とはいったいなんなのか」を考える一手掛かりになることはまず間違いありません。

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まとめ

大作家レフ・トルストイの作品についてみてきました。
いずれの作品もトルストイの想いと宗教への考えが見て取れます。
小説を読む前に、トルストイがどんな思想を持っていたのか、神をどれほど信じていたのかなど知っていると、いざ小説を読もうとなった時にすっと頭の中に内容が入ってくるかもしれません。
トルストイの作品は膨大な量あるので、ちょっとトルストイに触れてみたいという方はまず短編から試してみてはいかがでしょうか。
近年は映画化されたものもあるので、先に映画で大体のストーリーを掴んだ上で、原書に挑むというのもおすすめです。

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