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横溝正史の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作7選

出典:[amazon]横溝正史読本 (角川文庫)

「犬神家の人々」や「悪魔の手毬唄」などで知られる横溝正史。金田一耕助シリーズで不動の人気を得た横溝正史の作品は、映画やドラマ、漫画などになり現在でも幅広い層から支持されています。昭和という時代にミステリー旋風を巻き起こした横溝正史の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は横溝正史の作品の特徴や、おすすめ代表作を7つ紹介します。

横溝正史の作品の特徴や評価について


雑誌「新青年」に応募した「恐ろしき四月馬鹿(エイプリルフール)」が入選し、作家の道を歩きだした横溝正史は、のちに自身が「新青年」の編集長を務めます。編集長を退職し、本格的に作家に専念した初期の作風は、谷崎潤一郎や佐藤春夫の影響から耽美的(たんびてき)傾向が見られ、のちの推理小説的雰囲気とは異質なものでした。その後、徐々に探偵小説を執筆する横溝ですが、なかでも戦前に書かれた「真珠郎」が好評を博し、江戸川乱歩はこの作品について「横溝探偵小説の一つの頂点」と絶賛しています。

第2次世界大戦後は、「本陣殺人事件」や「八つ墓村」など金田一耕助シリーズを筆頭に本格推理小説に移行します。こうした傾向は、ヴァン・ダインやディクスン・カーなどの海外のミステリー作家からの影響であると言われています。あくまでも論理的トリックの推理小説を重んじつつ、そこに日本独特の「おどろおどろしさ」を絶妙に溶け込ませ、作品の世界観を構築する手法は横溝ならではと言えます。

横溝作品のもう一つの大きな特徴は、映像化の多さです。「八つ墓村」や「犬神家の人々」は、ともに10度にわたり映像化され、発表から半世紀以上を経た現在でも多くのファンに愛されています。また、2019年からはイギリスやイタリアなどの海外にも作品が翻訳されており、なかでもイギリスでは好評を博し、2021年から2022年にかけて「八つ墓村」や「獄門島」も出版される予定です。

横溝正史のおすすめ代表作7選

横溝正史のおすすめ作品を紹介します。おもに金田一シリーズの紹介ですが、捕物帳などの時代劇も読んでみると、横溝に対して違った印象を持つかもしれません。

鬼火


1935年、雑誌「新青年」に発表した作品です。1934年、結核療養のために滞在した長野で執筆されました。横溝の耽美的(たんびてき)感性が味わえる代表作です。発表当時、検閲のため一部補填改稿されましたが、「虚無への供物」で有名な中井英夫が検閲前の本作を所持していたことから、現在では完全版としての「鬼火」が出ています。

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八つ墓村

1949年から1950年にかけて雑誌「新青年」に連載された横溝の代表作です。本作は金田一耕助シリーズの4作目で、シリーズのなかでも屈指の人気作となっています。作中の「祟りじゃ〜」というセリフは流行語になりました。この作品は1938年に岡山で起きた「津山30人殺人事件」がモチーフとされています。「獄門島」、「本陣殺人事件」と並び「岡山もの」としても知られており、8人の落武者たちの祟りが残る「八つ墓村」で起こる難事件に金田一耕助が挑みます。映画・テレビドラマなど10度にわたって映像化された作品です。

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犬神家の一族


八つ墓村と並び、横溝作品のなかでもっとも有名な作品です。1950年、雑誌「キング」1月号から5月号にかけて連載されました。金田一耕助シリーズのテレビドラマ化第1作目としても知られており、ゴムマスクを被った佐清(すけきよ)や、「逆さまになって下半身だけ露出した死体」はこの作品の代名詞と言えるでしょう。
犬神家の顧問弁護士事務所に勤務する若林から、犬神家の調査を依頼された金田一耕助。莫大な遺産を残して死んだ犬神佐兵衛(いぬがみ・さへえ)の遺言状が犬神家全員の前で公開されると、莫大な遺産を巡り恐ろしい連続殺人が起きます。

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獄門島

1947年から1948年に雑誌「宝石」に連載された作品です。「獄門島」は日本ミステリーの最高峰と称されています。作中に俳句を用いたプロットは、発表当時とても話題となりました。
終戦から1年が経過したある日、金田一は戦友・鬼頭千万太(ちまた)の訃報を伝えるために、千万太の故郷・獄門島を訪れます。古い習慣が残る獄門島では、鬼頭家の本家と分家でいがみ合いが続いていました。「3人の妹たちが殺される」と言い残して死んだ千万太の言う通り、3人の妹たちは次々と殺害されます・・・。

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悪魔の手毬唄

1957年から1959年にかけて雑誌「宝石」に連載されました。
一時的な静養場所を探していた金田一耕助は、岡山県警の礒川警部の元を訪ねます。そして礒川警部から寒村「鬼首村(おにこうべむら)」にある温泉宿「亀の湯」を紹介された金田一耕助。それと同時に、礒川から23年前に「鬼首村」で起きた殺人事件について聞かされます。静養のつもりで訪れた岡山でしたが、金田一は事件の調査に乗り出します。手毬唄になぞらえて行われる連続殺人の真実とは。

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悪魔が来たりて笛を吹く

1951年から1953年にかけて、雑誌「宝石」で連載された金田一耕助シリーズの人気作です。他の作品同様、映画化やテレビドラマになっており、漫画版も出版されています。1948年に起きた「帝銀事件」をモチーフにしており、推理小説ではお馴染みの「密室殺人」が登場します。
「悪魔が来たりて笛を吹く」と書かれた遺言を持って金田一の前に現れた美女・美禰子(みねこ)。父が生きているかを占うため、金田一と美禰子の2人は、現れる模様で吉凶を占う「砂占い」を始めます。果たして、そこに出てきた模様は「悪魔の紋章」と言われる不吉なものでした。

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人形佐七捕物帳

江戸を舞台とした、色男の岡っ引・佐七が活躍する時代劇シリーズです。京人形のような美男子で、腕っ節と度胸を兼ね備えた佐七が数々の難事件を解決します。全180編にも及ぶシリーズで、新聞、雑誌、単行本など多くの媒体で発表されました。このシリーズは岡本綺堂(きどう)や野村胡堂(どう)などが書いた捕物帳と共に「五大捕物帳」の1つに数えられています。

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まとめ

いかがでしたか?横溝は20世紀を代表する推理小説家であるのは言うまでもありませんが、「捕物帳」のような時代劇物も数多く執筆しました。今回の記事で少しでも横溝作品に興味を持った方は、ぜひ日本最高峰の横溝ミステリーに触れてみてはいかがでしょうか。

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