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フョードル・ドストエフスキーの作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

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同じロシアの文学者、トルストイと並びロシア文学を代表する作家ドストエフスキー。
ドストエフスキーの作品は同時代の人々だけではなく、20世紀の思想界にも多大な影響を与えています。例えば、哲学者ヴィトゲンシュタインはドストエフスキーの代表作「カラマーゾフの兄弟」を少なくとも50回は読んだそうです。日本においても、作家の江戸川乱歩や小林秀雄などはドストエフスキーに強い影響を受けました。そんなドストエフスキーの作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回はドストエフスキーの作品の特徴とおすすめ代表作をご紹介します。

ドストエフスキーの作品の特徴や評価

ドストエフスキーは、人間の内面性を鋭く観察した作風からロシアにとどまらず全世界的に読者を獲得しました。文学というジャンルながら、作品で展開される思想はニーチェを初めとしたした哲学者にも影響を与え、20世紀においてはサルトルの実存主義や構造主義的解釈も加えられています。

反権力的作品が多いため、ソビエトのスターリン時代には発禁となりましたが、スターリン時代の終焉と共に再び世界中の読者によって愛読されています。ドストエフスキーの作品の魅力は、自身のシベリア流刑の経験からくる「リアリティー」や、そこで見た「人間精神の根本」が赤裸々に語られているところにあるのではないでしょうか。

初期の作品は、ドストエフスキーが空想社会主義に傾倒していたこともあり政治的傾向が強いですが、晩年の5大作品の頃になると、人道主義をベースにした「ヒューマニズム」的傾向が強まります。例えば代表作「罪と罰」では、「1つの罪悪は100の善行によって償われる」という思想を持つ主人公ラスコーリニコフが殺人を犯しますが、ソーニャとの出会いがきっかけで、最終的にはキリスト教的ヒューマニズムによって改心し、悔い改めます。

このように、時代と共にドストエフスキーの思想的変遷が如実に変化していくのも、ドストエフスキーの作品の特徴と言えるのではないでしょうか。また20世紀に入ると、精神分析的アプローチや、記号論的アプローチなど多方面からの解釈がなされており、21世紀となった現代でも、その作品のテーマや文学的技法は学術的研究対象として輝きを放っています。

ドストエフスキーのおすすめ代表作5選

ドストエフスキーのおすすめ作品をご紹介します。これ以外にも多くの代表作がありますが、今回は初期の作品と後期の円熟作品をご紹介します。

貧しき人々

1846年に発表されたドストエフスキー初期の中編小説です。往復書簡形式で書かれたこの作品は、当時の貧しい農民の姿に共感して執筆されました。初老の役人マカールと少女ワルワーラ(愛称ワーレンカ)との書簡のやりとりを軸に物語が進行します。仕事を失わないように、静かに目立たないように生きているマカールは、ワーレンカとの書簡を通じて次第に恋心を抱きます。しかしマカールの愛情表現も虚しく、ワーレンカは大地主の元に行ってしまうのでした。この作品を発表した当時、作品を読んだ文芸評論家ベリンスキーは「新しいゴーゴリが現れた」と絶賛しました。

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虐げられた人々

1861年、兄・ミハイルと共に立ち上げた雑誌「時代」の初回から7回にわたり連載された長編小説です。作品は全4部とエピローグで構成されています。物語の語り手である「私」の妹であるナターシャの物語と、少女ネリーの家族の悲劇的物語の2つの物語が、ワルコフスキー公爵を軸に絶妙に絡み合います。他の作品と同様に、さまざまな分野に影響を与えており、黒澤明監督の「赤ひげ」にもオマージュとして採用されています。

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悪霊


1871年から1872年にかけて「ロシア報知」で連載された長編小説です。翌年の1873年に出版されました。タイトルはロシアの文豪プーシキンの詩から採用されています。ドストエフスキー5大小説の一つで、作品には無政府主義、ニヒリズム、社会主義など多くのテーマが盛り込まれています。知力・体力・美貌のすべてを兼ね備えた主人公スタヴローギンを中心に物語は進みます。スタヴローギンの思想を通じて、当時のロシアの思想背景やドストエフスキーの宗教観が読み取れると言われています。

この作品は1869年に起きたネチャーエフ事件からヒントを得て執筆されました。

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罪と罰

1866年、「ロシア報知」1月号から10月号にかけて連載された作品です。ドストエフスキーの作品といえば、「罪と罰」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「現代の予言書」と称される本作は、主人公のラスコーリニコフが自身の信念に基づき、金貸しの老女アリョーナ・イワーノヴナを殺害することから物語が始まります。しかし殺すつもりがなかったイワーノヴナの妹も殺害してしまったことで、ラスコーリニコフは罪の意識に苛(さいな)まれます。そんなラスコーリニコフの前に1人の娼婦・ソーニャが現れます。ソーニャとの出会いにより、徐々に変化が起きるラスコーリニコフですが・・・。

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カラマーゾフの兄弟

1879年に雑誌「ロシア報知」に連載されたドストエフスキー最後の長編小説です。1881年にドストエフスキーがこの世を去ったため、1部だけが完成された未完の作品となっています。ドストエフスキーの最高傑作とは何か?と聞かれた場合、いろいろな意見があると思いますが、間違いなくこの作品も候補として挙げられます。4部とエピローグで構成されており、作品内では人間の持つさまざまな側面(宗教・国家・親子・死)がテーマとなっています。なかでも「大審問官の章」は有名で、ドストエフスキーの思想の深さが鮮明に伝わる内容となっています。

イギリスの作家サマセット・モームは、この作品を「世界10大小説」の1つとして選んでいます。

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まとめ

ドストエフスキーの代表作を5つご紹介しました。ドストエフスキーは、実に膨大な量の作品を残していますが、なかでも今回ご紹介した作品は、文学好きな方なら一度は聞いたこと(もしくは読んだこと)があるのではないかと思います。現代でもさまざまなアプローチで学術的研究が発表されているドストエフスキー。読み通すのは少し大変かもしれませんが、たまには、じっくりと腰を据えて大作を読んでみるのも楽しいかもしれませんよ。

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