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江戸川乱歩の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選

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江戸川乱歩は、20世紀に活躍した日本を代表する推理作家の一人です。乱歩の作品は大衆から絶大な人気を博し、存命中に全集が4回刊行されるなど前代未聞の作家として今もなお語り継がれています。なかでも明智小五郎シリーズはドラマや舞台などで幾度も取り上げられ、現在でも多くの読者に愛されている作品です。そこで今回は、江戸川乱歩の作品の特徴や、数ある名作のなかからおすすめ代表作を6つご紹介します。

江戸川乱歩の作品の特徴や評価

江戸川乱歩の作品の特徴として、日本に「探偵小説」というジャンルを確立したことが挙げられます。乱歩以前の作品にも、谷崎潤一郎の「途上」や芥川龍之介の「藪の中」など、一部ミステリー的要素を含んだ作品がありましたが、探偵が登場し論理的に謎を解明するという作風を確立したのは乱歩でした。その多くは、名探偵・明智小五郎シリーズと怪人20面相シリーズに分けられ、大人から子共まで幅広い人気を獲得しています。

乱歩の作風のもう一つの特徴は、「パノラマ島奇譚」や「押絵と旅する男」、「鏡地獄」に見られるような、怪奇や不思議小説も多く書いた点にあります。謎を解決する作風とは異なり、「物語全体として」不思議な雰囲気を醸し出し、登場人物の心理描写や風景描写の表現の巧みさが乱歩作品の特徴と言えるでしょう。

乱歩の奇想天外な発想と写実的描写は、映像の世界にマッチし、数々の作品が映画化またはドラマ化、漫画となり現代でも多くの人々に愛されています。作家として円熟期を過ぎると評論やプロデューサーとしても活躍し、多くの有名作家を発掘しました。乱歩に師事した作家の山田風太郎は、「大乱歩」と呼ばれた乱歩について、「大の字を冠してこれほどおかしくない人も珍しい」と述べています。

晩年は作家としての業績が評価され、1961年(昭和36)に紫綬褒章を受賞しています。また、ミステリー作家の登竜門である江戸川乱歩賞が設立されて以来、多くの優れたミステリー作家を世に出しています。

江戸川乱歩のおすすめ代表作6選

江戸川乱歩のおすすめ作品をご紹介します。今回は特に有名な作品に焦点をあてました。まだ読んだことがない作品があれば、ぜひご一読をオススメします。

D坂の殺人事件

1925年(大正14)に発表された短編小説です。名探偵・明智小五郎が初登場する作品として知られています。雑誌「新青年」に掲載され、乱歩自身が「本格探偵小説」とした密室トリックを題材にした作品です。また作品内では、心理学と犯罪との関係に触れており「心理試験」が大きなテーマとなっています。

ある日、白梅軒というコーヒー店でコーヒーを飲んでいた「私」は、書生である明智小五郎と知り合います。明智と意気投合した「私」は、ひょんなことからコーヒー店の向かいにある古本屋に向かいますが、店のものは誰も出てこない。不審に思った「私」と明智は店の奥に進むと、店主の妻が殺されているのを発見します。しかし状況から考えて、その部屋は誰も入ることのできない「密室」であることに気づきます・・・。

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人間椅子

1925年(大14)、雑誌「苦楽」で発表された短編小説です。乱歩自身はこの作品を「駄作」と捉えていましたが、本人の意に反して大人気作となり映画や舞台、テレビドラマなどで何度も取り上げられている作品です。乱歩初期の「エログロナンセンス」の代表作とされており、「椅子の形が人間のしゃがんだ格好と似ている」ことから着想を得たと言われています。この作品の執筆の際には、実際に人間が椅子に入れるかどうかを友人の推理小説家の横溝正史と調べにいったという逸話も残されています。

容姿は醜いが、椅子職人としての腕前には自信のある「私」。「私」には偏執狂があり、椅子の中で生活することでその偏執狂を満たしているのでした・・・。そんなある日、女性作家・佳子のもとに1通のファンレターが届きます。その手紙を読んだ佳子は内容に驚愕し恐怖します。果たして、その手紙に書かれていた恐ろしい内容とは。

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黒蜥蜴(とかげ)

女盗賊、通称「黒蜥蜴」と名探偵・明智小五郎との対決を主軸とした乱歩の長編小説です。1934年(昭和9)、雑誌「日の出」の1月号から12月号に掲載されました。「本格」探偵小説ではなく、「変格」探偵小説だったため乱歩は納得がいかなかったようですが、作品は大人気となりました。のちに作家の三島由紀夫が戯曲として雑誌「婦人画報」に掲載し、現在でも三島脚本の「黒蜥蜴」はとても人気のある作品となっています。なお、三島の「黒蜥蜴」は、黒蜥蜴と明智の恋愛を押し出した作品となっており、会話には歌舞伎の手法が取り入れられています。

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屋根裏の散歩者

1925年(大14)に発表された短編小説です。雑誌「新青年」に掲載されました。明智シリーズ5作目となる本作は乱歩の代表作の一つとされ、5度の映画化もなされています。
小説家になる前に勤務していた造船所での経験や、自宅の屋根裏に侵入した経験からヒントを得て執筆されたそうです。

乱歩がこの作品を執筆していた時期は父が病気療養中だったこともあり、乱歩本人は「間に合わせなメチャメチャなものだった」と述べており、また「論理探偵小説としては不合格かもしれない」と評しています。乱歩自身が評価した通り、探偵小説としての厳密性は批判を浴びたものの、アイディアや着想は大きく評価され、現在では乱歩の代表作の一つとなっています。

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赤い部屋

1925年(大14)、雑誌「新青年」に発表された作品です。「D坂の殺人事件」から始まる6ヶ月連続短編掲載の第4作となる作品です。作家として谷崎潤一郎に大きな影響を受けた乱歩は、谷崎の「途上」にヒントを得てこの作品を書き上げました。プロバビリティー犯罪(いわゆる完全犯罪)と名付けた「途上」のプロットを、乱歩は探偵小説に応用しました。

物語の舞台は、刺激を求める人々が集まる「赤い部屋」。ある日そこに「T」という人物が新入会員として訪れるところから始まります。「T」はこれまで自分が犯してきた99の殺人について語りますが、最後は途中から入ってきた女給仕にピストルで撃たれて死んでしまいます。それを見ていた「赤い部屋」の会員一同は騒然となりますが、これは「T」が仕掛けた大きなイベントの一つでした。「T」が「赤い部屋」に現れた本当の目的とは・・・。

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怪人20面相シリーズ

1936年(昭和11)、雑誌「少年倶楽部」に連載された作品です。江戸川乱歩の大人気シリーズであり当時の子供たちから多大な人気を獲得しました。シリーズ第1作目の「怪人20面相」は、名探偵・明智小五郎の助手を務める小林少年を中心として物語が展開します。

怪人20面相シリーズは30作品を超えており、このシリーズの人気の高さを伺えます。子供向けに書かれた作品ですが、大人も十分楽しめる、まさに娯楽小説の代表シリーズといえるでしょう。

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まとめ

江戸川乱歩の作品の特徴やおすすめ作品をご紹介しました。乱歩は、明智小五郎シリーズや怪人20面相シリーズの他にも、怪奇小説やいわゆる「エログロナンセンス」と呼ばれる作品も数多く残しています。今回ご紹介した作品をきっかけに、シリーズ以外の作品も読まれてみると、乱歩の新たな一面を楽しむことができるかもしれません。ぜひ、お気に入りの作品を見つけてみてください。

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