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山田美妙の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

出典:[amazon]書斎は戦場なり 小説・山田美妙 (中公文庫)

山田美妙は江戸から明治に移り変わる時代に生まれた作家ですが、そこまで知名度は高くないといわれます。彼は二葉亭四迷や尾崎紅葉とともに言文一致の先駆者として若い頃名声を得ましたが、その後世間や文壇との折り合いが悪くなり、次第に孤立してしまいました。
今回は、山田美妙の作品の評価や特徴、おすすめ代表作についてご紹介します。

山田美妙の作品の特徴や評価

山田美妙が名声を得た『武蔵野』は、言文一致体で書かれた、初の新聞小説でした。『武蔵野』は当時の人々に高く評価され、山田美妙は19歳にして流行作家の仲間入りを果たしました。小説に悲劇的な情緒や人間の感情などを織り交ぜていたことから「東洋のシェークスピア」という異名もあるようです。

しかし、一方で厳しい評価もあります。美妙の作品は時代小説が多いので、地の文が「ですます調」であるのに対し、会話文は時代小説で使われるような古めかしい言葉で、読みにくく、奇をてらっているという評価があります。擬人法や倒置法、独特な間投詞の多用も目立つので、感情過多であるとか押しつけがましいといった印象を受ける方もいるようです。また、主人公が死んで終わる作品や場面の継ぎはぎに感じられる作品、教訓が目に付く作品など内容に乏しいといった評価もあり、言文一致を進めた人物ではあるものの、厳しい評価もみられます。

美妙一番の問題作とされる『蝴蝶』は、挿絵に主人公蝴蝶の裸体が初めて用いられてしまったので、そちらで注目を浴びた結果、文学としての評価が正しくなされませんでした。

美妙のもうひとつの功績としては、国語辞典の編纂で、『日本大辞書』、『大辞典』、『新式節用辞典』、『人名辞典』などを編纂しました。日本の辞典で初めて口語体で書かれたもので、共通語のアクセントが付された最初の辞書でもあります。

また、美妙の『新体詞選』は日本で最初の近代詩集『新体詩抄』の二番煎じと呼ばれ、当時の評価は高くはありませんでした。しかし、美妙は知るよしもありませんが『戦景大和魂』のうち3章に小山作之助が曲をつけたため、第二次世界大戦中に軍歌『敵は幾万』として歌われるようになったといいます。

山田美妙おすすめ代表作5選

ここでは山田美妙のおすすめ代表作をご紹介します。興味の湧いた作品からチェックしてみてください。

蝴蝶

源平合戦の壇ノ浦の戦いの後、生き残った次女が天皇家再興か愛をとるかという話で、残酷なラストがなんともいえない悲哀を呼びます。挿絵に初めて裸体が掲載され、物議をかもした作品でもあるので、その点でも有名な代表作です。

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いちご姫

地の文に「ですます」調を用い、会話文は公家調の言葉なので、やや読みづらさもありますが、言文一致の流れのまっただ中にある文章として歴史を感じられる作品です。内容は、応仁の乱頃の時代小説で、「いちご姫」という美貌の烈女が主人公です。彼女は公家の姫君から女盗賊になったり、さまざまな男の関わりがあったりと数奇な運命をたどります。

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武蔵野

山田美妙を代表する、初の言文一致体で書かれた新聞小説です。言文一致の作品とはいえ、南北朝時代を題材とした時代小説であり、戯曲的な雰囲気も漂います。
悲しい短編小説で、逃亡せざるを得なかった父と夫を助けようとして武芸に身に覚えのある女・忍藻は家を抜け出します。ラストの救いようのない不条理な展開に驚かれる方もいるとか。『武蔵野』といえば国木田独歩も同じタイトルの作品がありますが、山田美妙の方は南北朝時代の話なので、全く違ったイメージの武蔵野が味わえるでしょう。

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あぎなるど


山田美妙が生きた時代におこった、フィリピン独立運動の話を当時の社会に伝えようとした本で、フィリピン独立運動を率いたホセ・リサールやエミリオ・アギナルドの2人を軸に展開していきます。劇曲調の独特な文章が特徴です。

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蝴蝶 他五篇 (岩波文庫)


「里見勝元」は、里見勝元と里見民部という実在の人物を史実に基づいて書いている話で、「二郎経高」は佐々木経高の生涯を書いた小説、「嗚呼広丙号」は日清戦争後に清から編入された巡洋艦・広丙の話で、広丙の元乗組員から美妙がインタビューした内容が収められています。「戸隠山紀行」は美妙が戸隠山へ行った紀行文で、美妙の人柄が垣間見られる作品です。

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まとめ

言文一致の先駆者とはいえ、厳しい評価も受けている山田美妙ですが、言文一致の時代の幕開けを感じられる作品や辞典など、後世に影響を与えたことは忘れてはならないでしょう。独特の文体や世界観に入り込むのもよし、明治時代の言文一致の時代を、作品を通して感じてみるのもよし。自分なりの楽しみ方をしてみてはいかがでしょうか。

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