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幸田露伴の作品の特徴や評価。おすすめ代表作4選

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慶応の幕末に生まれ、幼い時には「上野戦争」も経験した幸田露伴。紆余曲折を経て作家となり「大露伴」と呼ばれるまでになりました。釣りや書道、酒を愛し80年という人生で多くの作品を残しています。小説家・随筆家・歴史考証の分野で多大な功績を残した幸田露伴の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は幸田露伴の作品の特徴と、代表作「五重塔」をはじめ、おすすめ代表作をご紹介します。

幸田露伴の作品の特徴や評価

幸田露伴は、夏目漱石や正岡子規、尾崎紅葉と同じ1867年に生まれ「露伴・漱石・鴎外」と称される人物です。また同級だった尾崎紅葉と共に人気を博し「紅露時代」と呼ばれる一大ブームを巻き起こしました。

写実主義的だった尾崎紅葉に対し、露伴は一芸に生きる人間の姿や心情に重きをおき、
「写実主義の紅葉、理想主義の露伴」とも言われました。そうしたことから、幸田露伴は理想派の人物に分類する見方もあります。

幼い頃から儒学や仏典、曲亭馬琴や井原西鶴に傾倒していたため、東洋思想的が強いのも特徴です。「風流仏」などはまさにその代表で、その題材を法華経から得ています。また、中国文学や宗教を熱心に研究し「幽情記」や「運命」などを発表しました。とくに「運命」はしばらく文壇から遠ざかっていた露伴の人気を再燃させるきっかけとなった作品で、谷崎潤一郎が絶賛したと言われています。

碩学(せきがく)だった露伴は、1920年から1937年の17年間に渡り「芭蕉七部集」の注釈も行い、芭蕉研究においても後世に多大な貢献をしました。慶応の幕末から昭和まで生きた幸田露伴は第1回文化勲章を受賞し、「大露伴」として数々の名作を世に発表しています。そしてその才能は娘の幸田文(あや)に引き継がれ、作品を通しては知ることのできない露伴の父親像を見せてくれています。

おすすめ代表作4選

おすすめ代表作をご紹介します。露伴による「男気」溢れる作品をぜひご一読ください。

五重塔

1892年(明治25)に発表された短編小説です。幸田露伴をもっとも代表する作品であり、自身の出世作でもあります。台東区谷中にある「谷中感応寺」がモデルとなっていて、執筆当時は実際に五重塔が現存していました(1957年に火事で焼失)。露伴特有の「雅俗折衷語」(※1)で執筆され、文語体と口語体が織りなすリズミカルな作品です。

腕は良いが、のろまな性格で「のっそり」といわれる大工の十兵衛と、大工を取りまとめる棟梁の源太の物語です。十兵衛には「いつか五重塔を作る」という大きな夢がありました。そんななか、「五重塔を建てる」という話を耳にした十兵衛は、自分が作った塔の模型を手に、寺の上人和尚に「自分に任せて欲しい」と直談判します。十兵衛の不遇を知った上人和尚は、塔の建築を十兵衛に任せますが・・・。

十兵衛と源太、二人の職人としての矜持(きょうじ)やお互いの心中を図る心理的描写などが丁寧に描かれた作品です。五重塔が完成した後の「嵐の場面」の描写は必読の文章です。

※1、「雅俗折衷語」とは地の文が文語体で書かれ、会話文が口語体で書かれた文章です。

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風流仏

幸田露伴が23歳のときの作品で「五重塔」と共に、初期の代表作とされています。仏教仏典に深い教養のあった露伴らしい作品であり、法華経がベースとなっています。「発端 如是我聞(にょぜがもん)」(※2)から始まり、各章には法華経方便品(ほうべんぼん)第2の「十如是(じゅうにょぜ)」が付けられています。仏教的思想と女性の美しさが重ね合わさり、古典の伝統と漢文学が一体となった傑作です。露伴の持つ、東洋思想が色濃く出ている作品とされています。

※2、「如是我聞」とは釈迦の弟子アーナンダの言葉です。訳は「私は(ブッダの言葉を)このように聞いた」という意味です。

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運命

1919年、雑誌「改造」に掲載された歴史小説です。14世紀の終わり、明朝(中国)が舞台となっています。洪武帝の死後、孫の建文帝が即位したところから物語は始まります。
「運命」を書いた当時、幸田露伴はこの話が史実だと思っていたそうですが、のちに「明史」や「明史紀事本末」を元にしたフィクションだと知ったそうです。「銀河英雄伝説」で知られる作家の田中芳樹は、「運命」を現代版にリライトした「運命 二人の皇帝」を発表しています。田中芳樹は大学院時代に論文を書いたほどの露伴ファンだそうです。

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一口剣(ひとくちけん)

刀鍛冶を目指し修行していたが、妻のお蘭と駆け落ちしつまらない日常を送っていた主人公・正蔵。妻と喧嘩ばかりの毎日に嫌気がさしていましたが、ある日お蘭の機嫌を取るために「自分は世界一の刀鍛冶だ」と嘯(うそぶ)いてしまいます。その噂が殿様の耳に入り、正蔵は優れた刀を打つように命じられます。新しい刀を打つために、殿様からお金をもらった正蔵ですが、お蘭がその金を持って逃げてしまいます。嘘であることを正直に話そうとする正蔵ですが、刀を打つことに決め一心不乱に作業に取り掛かりますが・・・。

露伴が得意とした「一芸に生きる男の生き様」が最後の一言に見事に凝縮されています。

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まとめ

今回は、幸田露伴の作品の特徴と代表作をご紹介しました。文語体と口語体が入り混じりながら、抑揚の大きい文体が露伴の最大の魅力だと思います。少し(かなり)難しい文章もありますが、漢文に触れるつもりで読むのも一つの面白さではないでしょうか。幸田露伴の作品はこれ以外にもたくさんありますので、青空文庫などで探してぜひ一読してみてください。

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