子育てする中で、一度は悩むのがテレビとの付き合い方です。
毎日見せていますか?時間はどれくらいですか?
2003年に始まったNHKによる“子どもに良い放送”プロジェクトの調査によると、子供とテレビの接触時間は、親と一緒に見る時間も含めて0~1歳児が1日平均3時間程度。2~5歳では2時間~2時間30分程度でした。
子供が小さいほど、長時間視聴している家庭が多いようです。テレビが子供に良くないという話題を耳にして気になってはいるけれど、本人が見たがるから、みんな見せているから、など様々な理由で結局テレビを見せている方も多いのではないでしょうか。テレビが子供にどのような影響をおよぼすと言われているのか、また実際はどうなのか、テレビとの付き合い方に関する最新の情報をまとめました。
テレビが子供におよぼす影響?
テレビが子供におよぼす影響について、これまでどのようなことが指摘されてきたのでしょうか。
2004年に日本小児科学会は「子どもとメディア」の問題に対する提言として、乳幼児が長時間テレビなどのメディアに触れることの危険性について発表しました。
具体的には、長時間視聴する子ども(家族が長時間視聴する場合も含む)は言葉の発現に遅れが認められること、表情が乏しかったり親と視線を合わせないなど、心の発達に影響があることが指摘されています。
また長い時間テレビを見ていると、眼の筋肉の緊張が続くため、負担をかけて視力低下につながることも悪影響の1つであると言われています。その他にも、
- 運動不足になる
- 睡眠不足になる
- 危険なことや言葉づかいを真似してしまう
などがテレビの悪影響として挙げられていることです。
一方で、テレビを見ることの効果について指摘する専門家も数多くいます。教育番組のキャラクターを真似して生活習慣を身につけたり、紙面では捉えづらい数やかたちなどについての認識力を伸ばすことは、テレビの持つメリットであると言えるでしょう。また見たことのない生物や行ったことのない国について知ることができるため、子供の世界が広がるきっかけにもなります。
このようにテレビと子供については様々な意見があり、多くの研究がなされてきました。しかしテレビがおよぼす直接的な影響について分かってきたのはごく最近のことです。新しい研究結果にもとづいたテレビとの正しい付き合い方について、次項よりご紹介します。
重要なのは視聴時間ではない。最新の研究から分かったこと
子供にテレビを見せる上で一番気になるのが、1日の視聴時間です。どれくらいであれば子供に悪影響がないのでしょうか?
まず知っておきたいのは、テレビの視聴時間が直接子供に及ぼす影響についてのデータはない、ということです。よく耳にする「1日2時間以内」というのは日本小児科学会が提言した数字ですが、実は科学的な根拠はありません。
これは乳幼児の自由時間を1日約6時間とすると、テレビに使える時間は約3分の1である2時間が妥当である、という考えから設定されたものです。前述の“子どもに良い放送”プロジェクトの調査では、テレビの視聴時間の長さが子どもの問題行動に結びつくという因果関係はみられない、という分析結果が出ています。
また子供の発達に影響を与えるのは、テレビを見る時間の長さではなく、絵本や外遊びを通した人とのコミュニケーションであることが、発達心理学の研究から分かっています。つまりテレビを長時間見ていても絵本を読んだり人と会話する時間を十分作っていれば、子供は問題なく成長していくのです。逆にテレビを見ていなくても、コミュニケーションの時間が少なければ言葉をはじめ様々な発達に影響をおよぼすでしょう。
それから、子供とテレビを一緒に見て会話の道具にすることで絵本と同様に語彙量を増やす効果が期待できることも分かっています。大切なのはテレビの視聴時間ではなく、テレビをどのように見るか、またテレビ以外の時間をどう過ごすかということなのです。
1日何時間という数字はあくまで目安として、子供の食事や睡眠の時間が不規則にならないかどうか、その他の生活スタイルに影響していないかどうかを判断して視聴時間を決めましょう。そしてできるだけ子供と一緒にテレビを見て質問に答えたり、テレビ以外の時間に十分にコミュニケーションを取ることを意識するようにしてください。
子どもに守らせたい画面との距離
子供の視力は、1歳くらいで視力0.1~0.2、3~4歳くらいでおよそ視力1.0、8歳前後で大人と同じ程度の視力になると言われています。子どもにとって見やすい距離のめやすとしては、1歳ごろ:目の前から30cmくらい、2歳前後:目の前から50cmくらいが適切でしょう。子供はテレビに夢中になると、画面の前に行きじっと見入ってしまうことがあります。小さい頃から座るべき位置に椅子を置いたり、印をつけるなどして、一定の距離できちんと座ってテレビを見る習慣をつけましょう。
他にも決めておくべきテレビを見る時のルール
視聴時間と距離の他にも、テレビを見るにあたって子供と約束しておきたいのが次の5点です。
1.授乳中や食事中にテレビをつけない
テレビに夢中になるあまりに、食べることが疎かになるだけでなく、食事中の家族の会話を奪ってしまう可能性があるからです。
2.他のことをしている時はテレビを消す
食事中だけではなく、遊んでいる時や本を読んでいる時もテレビを消すようにしましょう。テレビをつけっぱなしにして別のことをすると、注意力が散漫になり全てが中途半端になってしまうため、作業効率や学習効果に悪影響を及ぼすことが分かっています。子供がテレビを見たがる時は、今やるべきことが終わってから見るように決めておきましょう。
3.子供にふさわしい内容であるか、確認してから見せるようにする
子どもが見たいというテレビは親が必ず確認し、道徳的に間違っている場面や危険な行為が出てきたら、子供に正しいことをきちんと説明するようにしましょう。
4.子供の部屋にテレビを置かない
子供がどのようにテレビを見ているか分からなくなるので、家族全員が過ごすリビングにのみテレビを設置しましょう。
5.親もテレビを長時間見ないようにする
子供が一緒にだらだらと見てしまわないよう、親自身の視聴時間にも気をつけましょう。
あとがき
今まで長時間テレビを見せていた場合、突然テレビを消したら子供は怒るかもしれません。大人が勝手にルールを決めて実行するのではなく、子供になぜテレビを見る時間を定めたのか事前に話しておきましょう。そしてテレビ視聴を含めて毎日決められた生活リズムを作るようにすると、子供は受け入れやすくなります。テレビの持つデメリットを最小限に、メリットを最大限にするためにも、親子で上手にテレビと付き合っていきたいですね。
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