出典:[amazon]武者小路実篤:よみがえる作家の声 NHKラジオライブラリー「よみがえる作家の声」シリーズ (NHK CD NHKラジオライブラリー「よみがえる作家の声」シリーズ)
代表作「友情」で知られる武者小路実篤は、公卿(くぎょう)の家柄出身でありながら、階級闘争のない、平等な社会を理想とした近代日本文学を代表する作家です。「暗夜行路」で知られる志賀直哉と学生時代に知り合い、のちに雑誌「白樺」を発刊。雑誌「白樺」はたちまち人気となり、全160冊が販売されました。日本の文学史を語る上で欠かすことのできない武者小路実篤の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は武者小路実篤の作品の特徴と代表作をご紹介します。
作品の特徴や評価は?
武者小路実篤は、志賀直哉や有島武郎らとともに雑誌「白樺」を発刊しました。そのことから実篤は「白樺派」の作家として認知されています。白樺派の人々は、理想主義や人道主義といった思想を軸にしながら、作品を通じて「人間の生命」を表現しました。実篤もこれと同じく、「友情」や「真理先生」といった作品内で、愛や葛藤になやむ主人公や、真っ直ぐに、純粋な心で生きることの素晴らしさを表現しています。
実篤の思想をよく表している言葉があります。
「愛なくて人は生きねばならなかったら、人生はついに地獄のなかの地獄である」
これこそ白樺派の思想であると同時に、実篤の人生観そのものなのかもしれません。
また実篤は40歳から絵を描き始め、多くの作品を残しています。作品には「讃」(さん)という短い言葉が添えられ、絵に書き添えられた言葉から、実篤の人生観を知ることができます。果物や野菜の絵を描くことが多く、実篤はそこから生命力のインスピレーションを受けていたのかもしれません。こうしたことから、実篤は、文学だけではなく絵画の分野でも広く評価されています。
武者小路実篤のおすすめ代表作6選
武者小路実篤の代表作をご紹介します。白樺派の作家らしくどの作品も「人間愛」があふれた作品となっています。ぜひ一度読んでみてください。
お目出たき人
1912年に刊行された実篤初期の小説です。主人公(自分)は、かつて近所に住んでいた「鶴」という女性に恋をします。主人公は、鶴に長年片思いをしていますが一度も話したことがありません。しかし主人公は、自分は鶴といつか結婚する運命にあると一人想像を膨らませます。そんなある日、鶴との仲介人から1通の手紙が届きます。その手紙には「鶴が人妻になった」と書かれていました。その手紙を受け取った主人公がとった行動とは・・・。
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友情
1919年に新聞連載された作品で、実篤の作品でもっとも有名な作品です。この作品は実篤が「新しき村」に住んでいた頃に書かれました。実篤は後年この作品を、「新しき村」に住む人々のことを思って書いたと述べています。
新人作家で主人公・野島と作家を志す大宮。やがて野島は、友人の妹・杉子に恋をします。そのことを野島は大宮に打ちあけますが、実は大宮と杉子はすでに両思いで結ばれていました。その後ヨーロッパに旅立った大宮から1通の手紙が届きます。そしてその手紙に書かれた内容に野島は心を乱されます・・・。友情とは何か、読む人の心理に迫る作品です。
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真理先生(しんりせんせい)
1949年からおよそ2年間にわたり雑誌連載された長編小説です。主人公の山谷五兵衛が真理先生という老人に出会い、真理先生が語る「真理」について思想を深めていくという作品です。石や草花を描くのが好きな画家・馬鹿一や有名な画家として成功する白雲子など、登場人物がユニークな作品となっています。この作品について実篤は「出てくる人物のほとんどが僕の分身である」と述べています。
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人間万歳
1922年に中央公論に掲載された戯曲です。この戯曲は、1925年に帝国劇場にて舞台上演されました。こちらも設定が面白く、神様やさまざまな天使が登場します。神様は、気まぐれで人間を作りましたが、作った本人は人間に関心がありません。しかしあるとき、別の宇宙の神様から、素晴らしく生きた人間の話を聞くと、地球の神様と天使たちが「人間万歳」と人間を賛美します。
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愛と死
1939年に発表された長編小説です。主人公で小説家の村岡は、尊敬する小説家の野々村と知り合います。やがて野々村の妹・夏子と近しい仲になりますが、村岡はパリに旅立ち、離れ離れとなってしまいます。離れている間も手紙のやりとりを続け、村岡がパリから日本に戻った後の結婚の約束もしていました。しかし村岡は、パリからの帰国途中、船の中で1通の電報を受け取ります。その電報には、夏子の急死が記されていました。実篤による、愛の無常が語られた作品です。
この作品はドラマや映画化もされています。
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わしも知らない
1914年、中央公論に掲載された戯曲です。翌年1915年に舞台作品として上演されています。この作品は、実篤初の舞台上演作品としても知られていて、仏典の一つである「増一阿含経」(ぞういつあごんきょう)の釈迦族殲滅(せんめつ)の話がモチーフであると考えられています。
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まとめ
いかがでしたか?今回は、武者小路実篤のおすすめ作品を6つご紹介しました。実篤の作品はどれも人間味が感じられ、人生の尊さや生きることの意義について考えさせられます。理想主義とされ、しばしば批判されることがありましたが、理想を掲げるからこそ現実を変えていく力になるのではないかと思います。何かでつまづきそうになったとき、心の支えとして、武者小路実篤の作品を読んでみてはいかがでしょうか。
>>武者小路実篤ってどんな人?その生涯や息子は?性格を物語るエピソードや死因は?
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