トキソプラズマの症状・感染・検査・治療について解説!

トキソプラズマって何?


あまり聞きなれない名前ですがトキソプラズマとは、Toxoplasma gondiiという原虫のことです。原虫ですから分類としては原生生物であり、アメーバ、ゾウリムシといった単細胞生物の仲間です。基本的に鳥類や哺乳類に感染します。ですから、人間だけではなく犬、猫なども感染することがあります。

しかし、風邪やインフルエンザのように遺伝子を変化させたり種類も豊富にないので、一度感染してしまえば免疫抗体が作られるため通常であれば二回目の感染はほぼありません。また、感染率は比較的高く全人類の30%以上は感染しており約数十億人に及ぶといわれているのです。

とはいっても、感染率は国、地域、文化、習慣、食事、ペットの保有率、衛生面などによっても大きく変わってきますので、先進国など衛生面がしっかりとしている国であれば比較的感染率は低いと考えられます。

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そして、このトキソプラズマの大きさは幅3マイクロメートル、長さ5~7マイクロメートルとなっておりまして、形は半円もしくは三日月の形をしています。繁殖に関しては哺乳類、鳥類に感染してそこで増殖を行いますが、単体で増殖を行うことができないのが弱点です。

トキソプラズマの感染経路について

トキソプラズマの感染力自体はそこまで強くはありません。風邪やインフルエンザと比べるとかかりにくいもので、空気感染、経皮感染はありません。主な感染経路としては、しっかりと加熱できていない食肉(豚肉)の組織シスト、または猫の糞に含まれるオーシストを経口摂取してしまうと感染します。

特に、猫を飼育していたり衛生面で少し問題がみられる場合は注意しましょう。猫の糞や汚染された土壌や水質から感染することが考えられます。これが鳥類、哺乳類の口から入り細胞内で増殖を行い中枢神経、筋肉内で組織シストと呼ばれる組織に分厚く丈夫な壁に囲まれた球体を作ります。この中には数千以上の原虫体が生息しており無性生殖を行い徐々に感染を拡大していきます。

たとえば、筋肉内に作り上げた組織シストを食べた鳥類や哺乳類も経口感染と同じ形で消化器を経由し体内に侵入します。そして、新たに組織シストを作り感染が広まっていきます。これは人間も例外ではありません。特に妊娠中は要注意!

なぜなら、組織シストが拡大するということは胎盤を経由して胎児に感染するからです。ただ、だからといって全ての妊婦が全ての胎児に感染するというわけでもありません。あくまでも危険リスクが向上するということです。

また、ネコ科の動物の場合は鳥類や他の哺乳類と比較しても腸内上皮にはとても繁殖しやすいです。8個の原虫を含んだオーシストという状態で糞と同時に塊となり排泄されます。この猫の糞が原因で、それが何らかの形で飲料水、土壌に混ざった場合トキソプラズマが感染することがあります。ですから自宅で猫を飼育していたり近所に野良猫がいる場合は注意を払う必要があります。

トキソプラズマ症の症状

トキソプラズマの症状は感染した時期や環境によって異なります。大きく分けると二つのケースがございますので簡単に説明させていただきますね。

先天性トキソプラズマ症

妊娠した女性がトキソプラズマに感染した場合胎盤を経由し胎児に感染すると説明させていただきましたが、それによって生じるのが先天性トキソプラズマ症です。全世界では1/10,000~80/10,000出生の確率で先天性トキソプラズマ症に感染するといわれています。

日本も年間400~4000人/1000000出生という頻度ですので他人ごとではないのです。また、妊娠初期に感染してしまった場合は重症のため流産してしまい先天性トキソプラズマ症なのか診断できないケースもありますので実際に感染した妊婦はこの数字よりも多くいると考えることができます。

あまり聞いたことがない病気のため関心をもてないところもあるかと思いますがこのように非常に深刻な病気なのです。妊娠初期に感染した場合、胎児死亡、妊娠中期は、脳炎、黄疸、肝脾腫(肝臓と脾臓が大きくなる)、リンパ節腫脹...そして、妊娠後期に感染すれば以下のような症状に悩まされることがあります。

1 脳の発達遅延
2 運動能力の発達遅延
3 脳脊髄液がたまり脳を圧迫する水頭症
4 網脈絡膜炎から視覚障害
5 脳でカルシウムがたまり脳内石灰化
6 痙攣、貧血、血小板減少、黄疸、肝機能障害、他

後天性トキソプラズマ症

出産後、特に普段健康な成人や子供が感染して生じるトキソプラズマ感染症です。ただ、感染してもその大半は無症状で発症してから症状がみられます。

1 急性感染 発熱、リンパ節腫脹、全身倦怠感
2 眼トキソプラズマ 視力障害、眼痛、羞明といった眼にみられるトキソプラズマ症です。感染経路の多くは先天性トキソプラズマが一度完治し、免疫機能低下などでトキソプラズマが再発することで起こります。
3 日和見トキソプラズマ感染症 AIDSといった免疫不全の方の場合感染してもすぐに発症せず潜伏していたトキソプラズマが再活性化することで脳炎、肺炎、脈絡網膜炎といった症状を招くケースがみられます。

大きく分けると以上のように二つのタイプがみられますが後者の後天性トキソプラズマ症はまだ病院へ行きしっかりと医師のアドバイスと治療を受ければ改善できるものですが、先天性になると胎児の生命にかかわります。

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特に、妊娠初期に感染してしまいますとトキソプラズマ症なのかわからず流産してしまうこともあります。また、仮に助かったとしてもその後、出産した子供が障害を背負ってしまったり人生に関わってしまうことになりますので妊娠中は特に感染しないように注意しなくてはいけません。

トキソプラズマ症の検査法について


先天性トキソプラズマは出生後の半年~1年後に抗体検査を行います。主に二種類の検査法がございますので簡単に説明させていただきます。

PCR検査 髄液からトキソプラズマ原虫を検出して分離、遺伝子の増幅を検査します。
IGM抗体検査 血液の抗体を検査します。

そのほか、妊婦で感染が疑われる場合は、IHA法、LA法といった抗体検査(トキソテスト)やELISA法などのIgM抗体検査、もしくはIgGアビディティという極めて正確性が高く診断が可能な検査法を行うわけですが、このなかでベストなものはやはり、IgGアビディティではありますが大学病院など一部の医療機関でのみ実施されていますので、トキソテスト判定を行うのが一般的かと思われます。

トキソテスト陰性 まだ感染していない
トキソテスト陽性・IgM抗体検査陰性 感染した
トキソテスト陽性・IgM抗体検査陰性・IgGアビディティ高値 感染した
トキソテスト陽性・IgM抗体検査陽性・IgGアビディティ低値 妊娠中で感染の可能性が疑われる

といった目安になります。ですから特に妊娠された場合、気になるようであれば手軽にできる検査をいくつも実施すると良いかと思います。ただ、妊婦の方が感染した場合胎盤を経由して胎児に感染する可能性はありますが、必ずしも感染するとも限りません。

もし、仮に胎児に感染したとしても必ずしもトキソプラズマ感染症に感染するとも限りませんので絶対にあきらめないでください。ただ、感染する自体危険リスクであることは否定できませんので妊娠初期段階であればトキソプラズマ感染症のリスクは大幅に抑えられるためこの期間はまずは検査を行い感染予防に徹することが重要になります。

トキソプラズマ症の治療について

トキソプラズマの治療といえば薬物投与です。一般的に使用される薬は、スルファジアジンやピリメタミンです。これらは胎児の影響がいため妊娠中の感染でも使用することができますが、残念ながら日本でも販売されているのにもかかわらず保険適用はされておりません。また、これらの薬の副作用について簡単にまとめてみました。

ピリメタミンの副作用

トキソプラズマ症に使用するとまれに葉酸欠乏により巨赤芽球性貧血を起こすこともありますが薬の投与を停止することで改善できますし、フォリン酸の投与を行うことで予防が可能です。

スルファジアジンの副作用

食欲不振、悪心、嘔吐が12%以上の患者にみられ、中枢神経に障害を起こす危険性が考えられております。また、尿PHが5.5を下回る可能性がありまして、結果的に不溶性になると腎結石を発症したり急性腎不全のリスクがございます。

そして、血液障害もみられ、G6PD欠損が生じた場合、溶血性貧血がみられたり、顆粒球減少症、汎血球減少症を起こすことがあります。また、AIDS患者の場合に多いのですが、過敏性反応が生じると、発疹、皮膚紅潮、掻痒感、光線過敏がみられることがあります。

一部の例ですが、服用を行ってから3~5日後に腎臓障害が発症し、急性黄色肝萎縮症に発展し死亡したケースもございますので体質によってはピリメタミンよりも毒性が強いと考えられます。

トキソプラズマ症の予防について

ピリメタミンであれば毒性は低いためまだ安心して使用できるとはいえますがそれでも薬です。毒性はございます。それにトキソプラズマ症はこれまでの解説の通りかなり厄介な病気でもありますのでできるだけ感染しないようにした方が良いです。

ただ、健康な方が感染してもそのほとんどは症状が見れないためわからずにそのままにしておくことが多いです。けれども、原虫が潜在感染していて発症していないだけとも考えれるためしっかりと予防を行うことは大切なのです。特に胎児が感染するのは非常に危ないため妊婦の方は予防に徹することが大切になります。

1 不十分な加熱処理が原因(牛刺、レバ刺、馬刺、)
2 土にトキソプラズマが生息している可能性があります
3 ヨーロッパ特にフランスなどは感染率が高い
4 猫の糞から感染する可能性が高い

基本的にこの4つの感染経路を気をつけることがポイントになります。特に妊婦の方であれば、「十分に加熱処理した肉類を食べる」「ガーデニングなど土壌いじりを設楽必ず手を洗う」「ヨーロッパ旅行は避ける」「猫のトイレは旦那さんに頻繁に処理してもらいあまり近づかない」などの対策を行いましょう。

 

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