梶井基次郎の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選。

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梶井の作家人生は実質7年間という短い期間でしたが、7年間で書かれた作品は今もなお多くの読者に愛されています。とくに代表作「檸檬」は、梶井の鋭い美的感性が存分に発揮された作品として有名です。そこで今回は、梶井基次郎の作品の特徴やおすすめ代表作をご紹介します。

梶井基次郎の作品の特徴や評価は?

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梶井基次郎が作家として活動していた時期の文壇の主流は、プロレタリア文学や新現実主義、新感覚派といったものでした。しかし梶井の作品はどの流派にも属さず、「梶井流」を貫いた作家といえます。

梶井の文学的センスや言葉の感性は、「詩的」という意味とはまた違った、独特の世界観を表現しています。生前はあまり評価されず、名前が売れ出した頃に亡くなってしまいましたが、同世代あるいはのちの作家に大きな影響を与えています。

例えば、梶井自身がライバル視していた横光利一は、梶井の作品について「静というものを見極めて描いた作家は、まだ日本には一人もいなかった」と述べ梶井を絶賛しています。

また梶井の「城のある町にて」の愛読者であった三島由紀夫は梶井について、「(梶井)氏は、日本文学に感覚的なものと知的なものとを統合する稀(ま)れな詩的文体を創始したのであります」と評価しています。

こうした背景には、フランスの詩人ボードレールの詩や、井原西鶴などの話法を研究した梶井の努力があったのかもしれません。

梶井基次郎のおすすめ代表作6選

梶井基次郎のおすすめ代表作をご紹介します。「檸檬」がとくに有名ですが、その他にも魅力的な作品がありますので、ぜひ読んでみてください。

檸檬

1925年(大正14)、梶井らが立ち上げた雑誌「青空」創刊号の巻頭に掲載された作品です。梶井を代表する作品として知られています。梶井の作品は冒頭から印象深いものが多く、「檸檬」の冒頭「得体の知れない不吉な魂が、私の心を終始押さえつけていた」の一行は、物語全体の雰囲気を表した絶妙な技巧で書かれています。

三高時代の梶井の心理的鬱屈がベースとなっている作品です。鬱屈した心理状態のなかに「レモン」という輝かしい宝石を見つけたときの感動が入り、作品全体として鮮やかに表現されています。
作品は、英語や中国語、スペイン語、フランス語などにも翻訳されました。

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冬の蠅

1928年(昭和3)、「創作月間」に発表された序章と3章で構成された短編小説です。「檸檬」と同様に、梶井作品のなかでも評価の高い作品となっています。

この作品について作家で評論家の小林秀雄は「無駄のない、謙虚とでも形容したくなるようないかにも自然な疲労がある。そしてそういう疲労が一種健康な感情を私に呼び覚ますのである」と述べています。

結核が悪化していた時期に書かれており、梶井自身の「運命」を詩的に表現した傑作の一つです。

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桜の樹の下には

1928年(昭和3)、雑誌「詩と詩論」に掲載された作品です。のちに作品集「檸檬」に収録されました。「桜の樹の下には屍体が埋まっている」という冒頭はとても有名です。
生き生きとした美しい桜を見て、不安と焦燥にかられた主人公・俺は「桜が美しいのは屍体が埋まっているからだ」という想像にとりつかれます。

桜の美しさが持つ「生のいろどり」と梶井自身に迫っている「死の様相」の対比が美しく描かれています。この作品は英語とフランス語に翻訳されています。

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愛撫

1930年(昭和5)、同人誌「詩・現実」創刊号に掲載された作品です。短編小説よりもさらに短い掌編(しょうへん)小説として発表されました。梶井は大の猫好きだったようで、病に倒れた晩年も三匹の猫を可愛がっていたそうです。病床に臥しながらも、梶井の優しくもいたずら心が見てとれる作品となっています。

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城のある町にて

1925年(大正15)、雑誌「青空」2号に掲載された梶井の代表作の一つです。また、作家の三島由紀夫が愛した作品としても知られています。
作品は6章で構成され、それぞれ
「ある午後」
「手品と花火」
「病気」
「勝子」
「昼と夜」
「雨」
となっています。
梶井の私小説的作品であり、「今、空は悲しいまでに晴れていた」は有名な一文です。この作品の背景には異母妹を看取ったという悲しい出来事がありました。

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のんきな患者

1932年(昭和七)、文芸雑誌「中央公論」に掲載された作品です。この作品で初の原稿料を手にし「作家」としての活動を期待されましたが、この年の3月24日に亡くなってしまったため、梶井の最後の作品となりました。

重症の結核で苦しむ主人公が懸命に「生」にしがみつく様やユーモラスな日常、同じ結核で死んでいった人々の暮らしぶりを描いた物語です。

この作品についても賛否さまざまに論評されていますが、詩人の菱山修三は「ボードレールの耽美とフローベールの清澄と、プルーストの優雅が『のんきな患者』の全体の文調の基調をなしている」と評価しました。

また直木賞で有名な直木三十五はこの作品を読んで、「シャッポを脱いだ」(※1)と絶賛しています。
※1、シャッポとは帽子のことです。つまり「脱帽した」の意味です。

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まとめ

いかがでしたか?今回は梶井基次郎の作品の特徴と、おすすめ代表作6作品をご紹介しました。どの作品も梶井の鋭い感性と、詩的雰囲気が感じられる良作です。生前は高い評価を受けることなく、31歳という若さでこの世を去りましたが、梶井が残した作品はその後の作家に強いインパクトを与えました。梶井の作品を通して、その生き様に触れてみてはいかがでしょうか。

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>>梶井基次郎ってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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