柚月裕子ってどんな人?経歴は?結婚してる?作品の特徴や代表作おすすめ本7選

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代表作『孤狼の血』の映画化や、『盤上の向日葵』では本屋大賞2位を獲得するなど、今もっとも注目を集めている作家・柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)。無骨な男社会をテーマにした作品から、繊細な臨床心理士を描く作品など、幅広いジャンルの作品を手がけています。40歳で文壇デビューという遅咲きの作家ですが、デビュー作『臨床真理』の発表以降、数々の文学賞を受賞しています。そんな才能溢れる作家、柚月裕子とはどのような人物なのでしょうか。今回は、おすすめ作品を紹介しつつ柚月裕子の経歴などを紹介します。

柚月裕子の経歴について

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柚月裕子の経歴について簡単に紹介します。子供の頃から文学や漫画に興味があったようですが、周りとは少し感性が異なる人物だったようです。

生い立ち

柚月裕子は1968年、岩手県釜石市に生まれました。父親が転勤族だったため、小学校2年生から5年生まで盛岡で過ごすなど、岩手県内を転々としていました。両親とも読書家だったようで、父親の本棚にはたくさんの本が並び、柚月はそこから自分の読みたい本を選んでいたそうです。ちなみに、柚月は子供の頃から「ヤクザもの」映画の大ファンで、後の人気シリーズ『孤狼の血』では舞台を広島とし、佐方貞人シリーズの主人公・佐方貞人の出身地も広島に設定されています。

また、朗読上手だった母親には昔話などを読んでもらい、なかでも夏に聞いた怪談『牡丹灯籠』が特に印象に残っていると述べています。小学校の頃から読書好きだった柚月は、子供用の『シャーロック・ホームズ』を読み、図書館にあった全てのシリーズを読破したそうです(後年、翻訳版の『シャーロック・ホームズ』を読み、子供用とのあまりの違いに衝撃を受けたとのこと)。

読書以外に漫画にも熱中した柚月は、小学生の頃にイラストクラブに所属し、物語を空想するのが好きだったこともあり、「将来は漫画家になれたら」と漠然とした夢を抱きます。その当時好きだった漫画は「ブラック・ジャック」や「あしたのジョー」などで、とくに「ブラック・ジャック」で描かれる、人の命や生き死に、死生観に大きな影響を受けています。
高校卒業後、父の転勤に伴い山形県山形市に移住し、そこで出会った男性(夫)と21歳の時に結婚し、一男一女を授かりました。

40歳で作家デビュー

結婚後は子育てのため、専業主婦をしていた柚月でしたが、子育てが落ち着いたのを機に、地元タウン誌の手伝いで取材原稿を執筆する傍ら、地元山形の小説スクール「小説家になろう講座」に通い始めます。当初はベテラン作家や編集者の話を聞くのが参加の目的でしたが、次第に自分でも作品を執筆したいという衝動にかられ作品を提出するようになりました。

そして初めて講座に提出した短編が、当時講師を務めていた作家・志水辰夫から好評を得たことに動機を得て、地元山形新聞主催の山新文学賞に作品を応募します。志水辰夫からは「頑張ればいいところまでいくんじゃないかな」という言葉を受けたそうです。これに対して柚月は「褒められると伸びるタイプ」と話しており、ここから柚月の作家人生がスタートしたといっても過言ではないでしょう。

その後2007年、同賞に応募した『待ち人』が入選し、柚月は本格的に作家の道を志します。そして翌年2008年、臨床心理士を主人公とした『臨床真理』を発表。この作品がいきなり第7回「このミステリーがすごい!」大賞に選出され、瞬く間に柚月は人気作家の仲間入りを果たし作家デビューします。作家デビュー後の柚月は、佐方貞人シリーズや『孤狼の血』三部作、『盤上の向日葵』などの人気作を立て続けに発表し、現在では「令和のベストセラー作家」と称される人気作家として、多くの読者を獲得しています。

作品の特徴は?

柚月作品の大きな特徴は、なんと言っても闇社会と警察との対立といった「男の社会」を描いているところにあります。これは柚月が子供の頃から「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」などの作品に親しんでいたことに由来しており、とくに、実際の闇社会の抗争を土台とした『孤狼の血』シリーズは、フィクションでありながら、そのリアルな心理描写や迫力が読者を作品の世界観に没入させます。

また、世の中の理不尽や不条理などの社会問題を作品テーマとし、それらを巧みに練り上げて作品を構築する点も柚月作品の特徴と言えるでしょう。その中で「自らの信じる正義を貫く姿」を描き、それぞれの正義がぶつかり合う姿が、読者の感動と興奮を呼び起こします。

結婚してる?

柚月裕子は結婚しているのでしょうか?。インタビュー記事などを読んで調べてみたところ、柚月は21歳で結婚し、一男一女を授かっていることがわかりました。2022年現在、柚月裕子は54歳ですので、おそらくお二人とも成人していると思われます。

お子さんたちが小さい頃は、絵本や昔話の読み聞かせなどをして毎日を過ごしていたそうです。その影響でお子さんたちも本が好きになり、図書館に一緒に本を借りに行った際には、上限の十冊ずつを借りて読書を楽しんだそうです。夫についても調べましたが、こちらについては詳しいことはわかりませんでした。夫は雑誌以外あまり本を読まないらし人物らしく、柚月が文学賞を受賞してもあまり関心を示さなかったと言われています。

おもな受賞歴

柚月裕子のおもな受賞歴を紹介します。40歳という遅咲きの作家ですが、才能はいつ開花するかわからないものだと改めて実感しました。

2007年『待ち人』・・・山新文学賞入選
2008年『臨床真理』・・・第7回「このミステリーがすごい!」大賞受賞
2012年『検事の本懐』・・・第25回山本周五郎賞候補/2013年、第15回大藪春彦賞受賞
2016年『孤狼の血』・・・第154回直木賞候補、第37回吉川英治文学新人賞候補、
第69回日本推理作家協会賞受賞
2017年『盤上の向日葵』・・・第7回山田風太郎賞候補/2018年、本屋大賞2位受賞
2020年『暴虎の牙』・・・第33回山本周五郎賞候補

代表作おすすめ本7選

柚月裕子のおすすめ作品を紹介します。男社会を描く作品から、繊細な心理描写で定評のある柚月裕子。その執筆ジャンルは多岐にわたります。

臨床真理

第7回「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作であると同時に、柚月裕子のデビュー作です。臨床心理士・佐久間美帆は「共感覚」と呼ばれる特殊能力を持つ青年・青木司を担当することになります。司は障がい者施設で起きた少女の自殺について「他殺である」と主張します。美帆は司を治療するかたわら、友人の警察官の助けを借り、事件の真相に迫りますが・・・。事件の真相に近づくにつれ、徐々に明らかになる驚愕の真実とは?

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盤上の向日葵

2015年から2017年にかけて『読売プレミアム』に連載された長編小説です。2019年にテレビドラマ化され、本作は本屋大賞2位を獲得しています。タイトルからもわかる通り、将棋の世界を舞台としたミステリー作品です。

埼玉県の山中で見つかった白骨死体の謎と、死体の遺留品である「将棋の駒」を手がかりに、2人の刑事が事件の真相に迫ります。

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最後の証人

柚月裕子が描く人気リーガル・サスペンス第1作目となる作品です。2015年にドラマ化もされました。

検事を辞め弁護士となった主人公・佐方貞人(さかた・さだと)が、法廷で事件の真相解明に尽力します。佐方のモデルは、柚月が敬愛するシャーロック・ホームズであり、佐方のクールで知的なキャラクターはまさにホームズを彷彿させます。シリーズ第1作目でありながら、「名作」との呼び声が高い作品です。

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検事の本懐

佐方シリーズの2作目となる作品です。主人公・佐方貞人の検事時代の物語を収録した短編集であり、この作品により柚月は第15回大藪春彦賞を受賞しています。本作も2016年にドラマ化されました。「樹を見る」「罪を押す」「恩を返す」「拳を握る」「本懐を知る」の5編が収められています。ヒューマンドラマを軸とした、弁護士時代の佐方とは違った、味わいのある短編集です。

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合理的にあり得ない/上水流涼子の解明

ある事情により弁護士資格を剥奪された元弁護士・上水流涼子と、IQ140という驚異的な頭脳の持ち主であるアシスタント・貴山が「ありえない依頼」に挑むミステリー小説です。柚月本人は「今まで発表した小説の中で、いちばんエンターテイメント色が強い」と述べています。5作からなる連作短編集となっており、二人の名コンビが「あり得ない依頼」を鮮やかに解決する爽快さが楽しめる作品です。

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慈雨(じう)

長年勤めた警察官を退職し、妻とともにお遍路の旅に出た主人公の神場智則。お遍路の旅先で、16年前に自らが担当した幼女殺害事件と酷似した事件を聞かされます。事件捜査に協力することを決意した神場は、同時に過去の自分自身と向き合うことになるのでした。

事件を解明するミステリー作品でありながら、一人の「人生」を描いた人間ドラマ溢れる作品です。

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孤狼の血

暴力団の抗争を舞台とした柚月裕子を代表する警察小説です。3部作1作目の本作は、2016年、第69回日本推理作家協会賞を受賞しています。また2018年には映画化もされ、柚月裕子の人気シリーズとして多くの読者を獲得しています。昭和57年の広島呉原を舞台に、マル暴と暴力団との激しい対立が描かれた、スリルとスピード感のある作品です。その展開の目まぐるしさに、ページをめくる手が止まらなくなること間違いナシです。シリーズは『凶犬の眼』『暴虎の牙』と続き、『暴虎の牙』は第33回山本周五郎賞の候補となっています。

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まとめ

今回は柚月裕子の経歴やおすすめ作品について紹介しました。子供の頃から「仁義なき戦い」や「県警対組織暴力」などが好きだったのが意外ですが、そうした経験が作品に反映されているのが興味深いですね。柚月裕子の描く世界観は、作者名が隠されていれば間違いなく「男性作家によるもの」だと勘違いしてしまいそうです。「令和のベストセラー」と称される柚月裕子。これからの作品も大いに期待してしまいます。

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