貫井徳郎のプロフィール。経歴は?結婚してる?作品の特徴やおすすめ代表作本7選

出典:[amazon]貫井徳郎症候群 (宝島社文庫)

重厚なストーリーと緻密なトリック、読了後のやるせなさがなんともクセになる作家・貫井徳郎。現代ミステリーを代表する作家の一人であり、本記事の読者の方にも貫井作品のファンの方も多くいらっしゃると思います。貫井徳郎は「イヤミス」の名手として知られていますが、重い読了感ながらも、その内容の奥深さに筆者も深い感銘を受けた覚えがあります。ミステリーを中心に、数々の名作を世に送り出し続けている貫井徳郎とはどのような人物なのでしょうか。今回は、貫井徳郎の経歴やおすすめ作品を解説します。

貫井徳郎のプロフィールと経歴について

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人気ミステリー作家・貫井徳郎はどのような経歴の持ち主なのでしょうか。意外にも貫井作品のルーツは、SF作家の平井和正氏にあるようです。

本の虫だった少年時代

貫井徳郎は、1968年、東京都渋谷区に生まれました。小学生の頃からいわゆる「本の虫」だった貫井徳郎は、学校の図書館で何気なく手にしたモーリス・ルブランの『813の謎』を読み衝撃を受けます。モーリス・ルブランといえば「ルパンシリーズ」でお馴染みですね。ルブランの作品に魅了された貫井は『813の謎』を読了後、図書館にあったルブランの作品を片っ端から読み、図書館にないものは本屋で買って読むほど読書に熱中したそうです。

こうした傾向について貫井本人は「一人の作家を気にいると全部読みたくなる」と後のインタビューで語っており、ルブラン読了後はシャーロック・ホームズのシリーズ全60編を制覇し、続いてアガサ・クリスティーの名探偵ポアロにのめり込みます。

中学になると貫井はSF作品に興味を持ち始め、なかでもSF作家・平井和正の作品に熱中しました。ダークな作風で知られる平井作品ですが、貫井の「イヤミス」的な作風は、平井和正の影響によるところが強いそうです。そして高校に進学した貫井は、自身でも小説を書くようになり、高校一年の時には第4回横溝正史賞に作品を応募しています。残念ながら受賞には至りませんでしたが、その後も、ハヤカワ・SFコンテストや講談社現代小説新人賞などの賞レースに積極的に作品を応募しました(ちなみに新人賞を目指した理由は「賞金でパソコンを買いたかったから」だそうです)。

退社後作家の道へ

1年の浪人生活を経て、貫井は早稲田大学商学部に進学します。それまでSF作品を中心に読んでいた貫井でしたが、浪人生活中に読んだ島田荘司の『占星術殺人事件』に感銘を受けたことがきっかけとなり、再びミステリー作品に興味を抱きます。このことについて、「(島田荘司の作品を)一気に読めたことが、一番の至福の体験だった」と後年語っています。ちなみに筆者も島田荘司の大ファンです。

大学卒業後、不動産会社に就職した貫井でしたが、1年で退社。しかし翌年1993年に執筆した『慟哭』が第4回鮎川哲也賞の最終候補となったことで注目を集め、東京創元社から「黄金の13」の1作として作家デビューを果たします。「黄金の13」とは東京創元社が刊行した13作からなる小説シリーズで、貫井の他に北村薫、有栖川有栖、篠田真由美、山口雅也などの人気作家が名を連ねています。

鮎川哲也賞受賞は逃したものの、北村薫の後押しもあり『慟哭』は50万部を超えるベストセラーとなりました。

イヤミスの名手として

『慟哭』がベストセラーとなり、一躍人気ミステリー作家となった貫井は、その後も『愚行録』や『乱反射』などの傑作ミステリーを次々と発表しています。貫井徳郎の作品の特徴として、巧妙なトリックや人間の心の闇を抉り出す観察眼などが挙げられますが、総じて「重い読後感」がしばしば指摘されます。しかし後味が悪いながらも、最後まで一気にページ捲らせる手腕は、貫井の作家としての技量と言えるでしょう。

「イヤミス」とは作品がハッピーエンドで終わらなかったり、事件をすべて解決せずに物語が進行する作品を指し、言葉としては「読後にイヤな気分になるミステリー」の略です。最近のミステリー作品に多い傾向のようですが、貫井はその中でも「イヤミスの名手」と称されています。その他、最近では渚かなえなどもイヤミスの作家として挙げられます。

結婚してる?

人気作家である貫井徳郎は結婚しているのか興味があるところですよね。結婚について調べてみたところ、貫井徳郎の妻は『ななつのこ』や『掌の中の小鳥』などの作品で知られるミステリー作家・加納朋子さんでした。

加納朋子さんは2010年に急性白血病に冒されましたが、その後回復し、2012年には闘病生活の様子を綴った『無菌病棟より愛をこめて』を発表しています。また、上述した「黄金の13」シリーズには、加納さんの『魔法飛行』も一連の作品に含まれています。

おもな受賞歴

貫井徳郎のおもな受賞歴を紹介します。4度も直木賞候補になっていることから、貫井作品の人気の高さがわかります。いつか直木賞を受賞して欲しいですね。

・1993年『慟哭』・・・第4回鮎川哲也賞候補
・1997年「子を思う闇」・・・第50回日本推理作家協会賞候補
・2005年『追憶のかけら』・・・第58回同上
・2006年『愚行録』・・・第135回直木賞候補
・2009年『乱反射』・・・第141回直木賞候補、2010年、第63回日本推理作家協会賞受賞
・2010年『後悔と真実の色』・・・第23回山本周五郎賞受賞
・2012年『新月譚』・・・第147回直木賞候補
・2014年『私に似た人』・・・第151回直木賞候補

貫井徳郎のおすすめ代表作7選

貫井徳郎のおすすめ作品を紹介します。ミステリー作品として一級品であると同時に、作品で描かれる人間模様にも定評があります。

崩れる 結婚にまつわる8つの風景

1997年に集英社から出版された結婚を題材にした短編集です。結婚というと一般的に明るいイメージがありますが、本作では結婚の「暗い一面」が描かれています。それぞれの作品には「崩れる」「怯える」「憑かれる」「追われる」などのネガティブなタイトルが付けられており、読んでいると心が重くなるテーマばかりです。

しかし、読者にそう感じさせる「リアルな描写」が貫井作品の魅力でもあります。この作品を読めば貫井徳郎「イヤミスの名手」と称される意味を理解できるでしょう。

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慟哭

東京創元社から出版された貫井徳郎のデビュー作です。上記の通り、東京創元社から刊行された「黄金の13」小説シリーズの1作であり、50万部を超えるベストセラーとなりました。

連続幼女誘拐事件を捜査する捜査一課長・佐伯。捜査に行き詰まり、なかなか犯人を逮捕できない佐伯に対し、世間の風当たりは厳しくなるばかり。犯人逮捕のため、佐伯は犯人を挑発するメッセージを送り事件解決を目指しますが・・・。ラストのどんでん返しに驚愕必至です。

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乱反射

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2009年に朝日新聞社から出版された作品です。貫井徳郎の最高傑作との呼び声が高い作品としても知られています。この作品により、貫井は第63回日本推理作家協会賞を受賞しています。小さな不幸が連鎖する「裁けない殺人」をテーマにした貫井徳郎渾身の社会派ミステリーです。誰もが犯しがちな「何気ないモラルの欠如」がやがて大きな社会の歪みを生み出します。

本作はマイナス44章から始まり、登場人物たちの細かな経緯を描きつつ、事件発生後の1章へと続きます。幼い子供を失った新聞記者がたどり着いた真相とは。

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微笑む人

「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻を殺害したエリート銀行員の仁藤俊美。事件に興味を持ったノンフィクション作家の「私」は、仁藤を題材にした作品を書くため、仁藤の過去を調べ始めます。事件を調査するにつれ、過去に仁藤の周辺で不審死が発生していたことを明らかにした「私」。果たして「私」が到達した仁藤の闇の正体とは何だったのでしょうか。手に汗握るラストの展開は目が離せません!

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私に似た人

2014年に朝日新聞出版から刊行された、貫井徳郎を代表する作品の1つです。舞台は小規模なテロが頻発するようになった日本。「レジスタント」と称するテロリスト達は、自らの命を犠牲にして冷酷な社会に抵抗します。実行犯には「貧困層」や「社会での居場所を見つけられない」などの共通した特徴があるものの、彼ら同士の直接的接点はありません。

本作はテロを実行する者やそれを追い詰める公安、傍観する人々の心情といったさまざまな視点から描かれた作品です。そして接点のないテロリストを結びつける影の黒幕の正体とは一体誰なのでしょうか。

テロの脅威が世界中で叫ばれる昨今。作中で描かれる世界観がフィクションであることが分かっていても、作品の持つ絶妙なリアルさが読者に没入感を与える一作です。筆者としては、作中のような世界にならないことを切に願うばかりです。

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灰色の虹

「小説新潮」で連載された長編小説です。2012年にはテレビドラマとして放映されました。運送会社に勤めていた江木雅史は、上司を殺害した罪で逮捕され、懲役6年の判決が言い渡されます。控訴・上告も棄却され、絶望に打ちひしがれながらも服役を耐えぬいた江木。出所後、すべてを失ったことを知った江木は、自分を貶めた人々への復習を誓うのでした。冤罪から始まった終わらない不幸の連鎖の先に待つ未来はどのような世界なのでしょうか。スリリングな展開にページをめくる手が止まらなくなる一冊です。

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愚行録

2006年、東京創元社より刊行された貫井徳郎の代表作の1つです。本作は第135回直木賞の候補となりました(第135回は三浦しをんが受賞)。2017年には映画化もされている作品です。

幸せを絵に描いたような田向一家が、深夜何者かによって惨殺されてしまいます。事件発生から1年が経過しても犯人が見つからず、事件は風化の一途を辿りますが、ある記者の調査がきっかけとなり、田向夫婦の知られざる側面が浮かび上がります。周囲の人々へのインタビューを元に次第に明かされる夫婦の本性とは・・・。貫井徳郎の心理描写が冴える作品です。

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まとめ

今回は貫井徳郎の経歴やおすすめ作品を紹介しました。今回のラインナップに皆さんのお気に入り作品は入っていたでしょうか。貫井徳郎の作品は必ずしも、いや大部分がハッピーエンドではありません。しかし作品に登場する人物の心理描写や、ラストのどんでん返しは読者を惹きつけて止みません。面白いミステリーを探している方は、今回の記事を参考に貫井作品を読んでみてはいかがでしょうか。

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