京極夏彦のプロフィール、経歴は?本名や家族は?作品の特徴やおすすめ本8選

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百鬼夜行シリーズや巷説百物語シリーズなどの作品で知られる作家・京極夏彦。読書好きの方なら、一度は読んだことのある人も多いのではないでしょうか。処女作『姑獲鳥の夏』(うぶめのなつ)はミステリー界に衝撃を与え、2作目となる『魍魎の匣』(もうりょうのはこ)では日本推理作家協会賞を受賞しています。おもに妖怪や怪談話をテーマにした作品で知られる京極夏彦ですが、一方で『ルー・ガルー』や『どすこい(仮)』など、ポップで洒落の利いたパロディー作品なども執筆しています。そんな京極夏彦とはどのような人物なのでしょうか。今回は謎につつまれた作家・京極夏彦について紹介します。

京極夏彦のプロフィール

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京極夏彦のプロフィールや作品の特徴について簡単に紹介します。暇つぶしに書いた小説が大ヒットするという、人並み外れた才能の持ち主のようです。

生い立ち

京極夏彦(本名・大江勝彦)は、1963年、北海道の小樽市に生まれました。残念ながら学生時代のエピソードはあまり見つけられませんでしたが、若い頃から「餓死しても、借金しても本を買いたい」と思うほどの愛書家だったらしく、作家として成功した現在の自宅には、延べ5万冊もの蔵書があるそうです(この辺は百鬼夜行シリーズの「京極堂」のイメージと重なります)。

北海道倶知安高等学校を卒業した京極夏彦は、桑沢デザイン研究所に進学するために上京します。しかし学生時代は大変苦労したようで、学費が払えずアルバイトに明け暮れ、最終的に同研究所を中退してしまいます。中退後はアルバイト先の広告代理店に就職して社会人生活を始めますが、体調不良により同社を退職。その後、広告代理店関係で知り合った仲間と共にデザイン会社を設立します。意外に思うかもしれませんが、京極夏彦はもともとデザイナーの仕事からキャリアを開始しています。

しかしバブルが崩壊すると、立ち上げたデザイン会社もその煽りを受け、低迷時代に突入します。企画書を作成するも空き時間が増える中、京極夏彦は暇つぶしに小説を書き始め、そうして完成されたのが処女作『姑獲鳥の夏』でした。

何気なく書いた小説がデビュー作に?

ダメ元で『姑獲鳥の夏』を講談社に送った京極夏彦ですが、編集者から思わぬ返事が届きます。作品はいわゆる「持ち込み」だったため、当初は「返事には数ヶ月から半年かかる」と伝えられましたが、担当編集者が作品を1日で読み終え、あっという間に『姑獲鳥の夏』は講談社から出版されることになりました。

『姑獲鳥の夏』を読んだ当時の編集者は、あまりの完成度の高さに「著名な作家のイタズラ」と勘違いしたらしく、一方の京極夏彦は返事の速さについて「まさかのドッキリではないか」と驚いたそうです。その後『姑獲鳥の夏』がヒットしたことで各出版社から執筆の依頼が殺到し、京極夏彦は職業作家としての道を歩むことになります。

メフィスト賞創設のきっかけとなる

メフィスト賞とは講談社が主催する新人賞です。1994年から開始され、2022年現在は第64回を数えます。ジャンルは固定されておらず、ミステリー、SF、ファンタジーなど「とにかく面白い作品」が対象となっています。人気作家の舞城王太郎や西尾維新などもメフィスト賞で作家デビューしています。そしてこのメフィスト賞の創設のきっかけとなったのが、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』だと言われています。第1回受賞者は大人気作家の森博嗣です。

妖怪もの、怪談話、SF小説など幅広い作風

京極夏彦の作品は百鬼夜行シリーズや巷説百物語、江戸怪談話シリーズなど、妖怪や怪談話から着想を得た作品が多いですが、その一方で『ルー・ガルー』などのSF作品や『どすこい(仮)』などのコミカルな作品も手がけており、執筆ジャンルの幅広い作家として知られています。

なかでも特徴的なのは、民俗学や妖怪、文学、歴史、宗教などの膨大な知識量であり、その全てが作品を構成する重要なファクターである点です。これらの情報が、知識の曼荼羅となり、一つの作品として姿を現します。

その他、ページの最終行で必ず文章を終わらせ、次のページに文章が跨らないというこだわりでも有名です。本人はこれについて、リーダビリティ(読み易さ)を高めるための「読者へのサービス」だと語っています。

京極夏彦の主な受賞歴

1996年、『魍魎の匣』・・・第49回日本推理作家協会賞
1997年、『嗤う伊右衛門』・・・第25回泉鏡花賞
2002年、『覗き小平次』・・・第16回山本周五郎賞
2003年、『後巷説百物語』・・・第130回直木賞
2007年、『邪魅の雫』・・・第7回日本本格ミステリ大賞
2011年、『西巷説百物語』・・・第24回柴田錬三郎賞
2022年、『遠巷説百物語』・・・第56回吉川英治文学賞

京極夏彦の本名は?結婚している?

京極夏彦の本名は?

京極夏彦の本名は「大江勝彦」だそうです。ちなみに京極夏彦のペンネームは「京(けい)」「極(ごく)」「夏(ナノ)」「彦(ピコ)」とそれぞれ数字を表す言葉の語呂合わせであり、名付け親は会社の同僚と言われています。語呂合わせにしてはかっこいい名前ですね。

結婚している?

私生活が謎に包まれている京極夏彦ですが、19歳の時に学生結婚をしたそうです。お子さんについては「『姑獲鳥の夏』を講談社に持ち込んだ時に子供が生まれることを知った」という話から、お子さんがいると考えられますが、詳細はわかりませんでした。

また自身の結婚観についてインタビューで聞かれた際には、「結婚は恋とは違い、無償の信頼関係を築くことを目的としたパートナー」と述べています。

おすすめ作品8選

京極夏彦のおすすめ作品を紹介します。今回紹介する作品はどれも傑作揃いですので、ぜひご一読ください。

姑獲鳥の夏

人気シリーズ「百鬼夜行シリーズ」の1作目です。安倍晴明の流れを汲む陰陽師にして、古本屋「京極堂」を営む中禅寺秋彦が、雑司が谷の医院で発生した難事件に挑みます。

ある日、関口は友人である「京極堂」こと中禅寺秋彦の元を訪ね、「20ヶ月もの間子供を身籠もっていることができると思うか」と切り出します。それに対し京極堂は、お決まりのセリフ「この世に不思議なことなど何もないのだよ」と切り返します。怪しい噂を調べるにつれ、次第に事件に巻き込まれていく関口と京極堂。そして事件は意外な展開へ・・・。本作で登場する、京極堂の「憑き物落とし」シーンは鳥肌ものです。

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魍魎の匣

「百鬼夜行シリーズ」の2作目であり、京極夏彦の最高傑作と称される作品です。この作品により、京極夏彦は第49回日本推理作家協会賞を受賞しています。前作『姑獲鳥の夏』にも増して、妖怪・民俗学・オカルトなどの知的好奇心をそそる内容が随所にちりばめられています。膨大な知識による物語の構築と濃密なストーリーは、必読の価値ありです。
本作は映画化もされ、2008年にはテレビアニメでも放送されました。テレビアニメも良作でしたが、ぜひ、原作を読むことをおすすめします!。「人間の狂気」や「幸せとは何か」を考えさせられる名作です。

絡新婦の理

1996年に講談社から刊行された「百鬼夜行シリーズ」の5作目です。「聖ベルナール女学院」を舞台に、複数の事件が絡み合います。複数の事件の中心にいる絡新婦の正体とは・・・。本作は冒頭にエピローグが置かれており、事件の真相が解明された後、再び最初に戻るという構成になっています。個人的に百鬼夜行シリーズの中でもっとも好きな作品です。

京極堂の「あなたが蜘蛛だったのですね」の一言から、物語の終わりが始まります。

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百鬼夜行-陰

「百鬼夜行シリーズ」のスピンオフ的短編集です。1作目の『姑獲鳥の夏』から『塗仏の宴』までの登場人物のサイドストーリーが語られる百鬼夜行シリーズファン必読の1冊です。本編と同じくタイトルには「目目連」や「鬼一口」などの妖怪名が付けられており、それぞれの妖怪になぞらえたストーリーが展開されます。2012年には「陰」に対応した『百鬼夜行-陽』が刊行されています。

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後巷説百物語

巷説百物語シリーズの一つです。この作品により、京極夏彦は第130回直木賞を受賞しています。シリーズは『巷説百物語』『続巷説物語』『西巷説百物語』など多数あり、いずれも江戸末期から明治時代を舞台とした時代小説です。江戸の町で起きる不可解な出来事を「妖怪のせい」にすることで解決する、小悪党・又一を主人公とした物語です。漫画やアニメ、テレビドラマ化された京極夏彦の人気シリーズです。百鬼夜行シリーズとは趣の違った世界観が楽しめます。

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嗤う伊右衛門

1997年に刊行された「江戸怪談シリーズ」の1作目です。この作品により京極夏彦は第25回泉鏡花文学賞を受賞しています。4代目鶴屋南北の『東海道四谷怪談』をモチーフにした、いわゆる「お岩さん」の物語ですが、全体としての内容は京極自身により大幅に変更されています。言うなれば、現代版『四谷怪談』とも言える作品です。本シリーズは『覗き小平次』、『数えずの井戸』と続きます。

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ルー・ガルー 忌避すべき狼

京極夏彦が描く近未来を舞台としたSF作品です。ヒトとヒトの関係が限りなく希薄になり、人々は完全に管理下に置かれています。そんな中、少年少女を狙った連続殺人事件が発生し、主人公・牧野葉月、都築美緒、神埜歩未らが被害者の一人である矢部祐子と接触したことで、三人は次第に事件に巻き込まれて行きます。事件の真相に近づく彼女たちがたどり着いた先にに見た光景とは・・・。2010年にアニメ版の映画も公開され、公開の際には「近未来の監視社会少女たちは立ち上がる」というキャッチコピーが付けられました。タイトルの「ルー・ガルー」とはフランス語で「人狼」を意味しています。

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どすこい

著名なミステリー作家の有名作をパロディ化し、そのすべてに「相撲」を絡めるという奇想天外な短編小説です。京極夏彦のユーモア満載の作品集であり、「四十七人の力士」や「パラサイト・デブ」、「すべてがデブになる」などユニークなタイトルが付けられています。元の作品を知らなくても十分楽しめますので、怪談が苦手だけど京極作品を読んでみたいという方にうってつけの1冊です。

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まとめ

いかがでしたか?今回は京極夏彦のプロフィールやおすすめ作品について紹介しました。百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)は1冊が長いため躊躇してしまうかもしれませんが、その面白さは折り紙付きです。筆者としては最新作を心待ちにしていますが、まだまだ先の様なので、他のシリーズを読みつつ気長に待つことにしています。反対に、これまで京極作品を読んだことのない方には、『姑獲鳥の夏』から読むのがおすすめです。この記事を機会に、ぜひ京極ワールドに踏み込んでみてください。

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