森鴎外の作品の特徴及び評価・功績。おすすめ代表作5選

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幕末の動乱に生まれ、明治から大正にかけて活躍した文豪森鴎外。鴎外は数多くの小説、評論、翻訳、戯曲などを執筆し、文明開化の日本に大きな役割を果たしました。また陸軍軍医として日清・日露戦争に従軍した後、「陸軍軍医総監」となっています。さらに晩年は帝国美術院の初代会長を務めるなど、まさに日本文学史における最高の文学者といっても過言ではないでしょう。今回は、そんな森鴎外の作品の特徴や、おすすめ作品を紹介します。

森鴎外の作品の特徴や評価・功績について

森鴎外の作品の特徴や功績について紹介します。明治という時代にあって、森鴎外はかなり先進的な人物だったようです。

文学的立場を巡って坪内逍遥と激論をかわす

森鴎外の作品は、文学史上において高踏派(こうとうは)に分類されています。高踏派とは、19世紀のフランスで発生したロマン主義と象徴主義の中間に位置した文学様式で、日本では鴎外の他に、堀口大學なども高踏派の作家として知られています。

このような背景もあり、鴎外は作品の中で、作者の理想や理念を描く「理想主義」の立場を取りました。しかし鴎外の立場は当時流行していた坪内逍遥や二葉亭四迷などの写実主義と対立し、やがて没理想論争に発展します。

外国文学を数多く翻訳

ゲーテやアンデルセンなどの海外作品を最初に翻訳したのは森鴎外でした。古い岩波文庫などの目録を見ると、鴎外訳としてゲーテの作品が掲載されています。その他にもオスカーワイルドの「サロメ」やシェークスピアの「マクベス」など、自身の作品数に迫るほどの翻訳をしています。鴎外が翻訳を手がけた理由としては、翻訳を多数出版することで、自身の名前を早く売り出すことが目的だったとも言われています。

女流作家を早くから認めていた鴎外

明治の頃は未だ女性蔑視の時代が強い時代でした。そんな中、鴎外は樋口一葉や平塚らいてう、与謝野晶子などの才能を早くから認め、彼女たちの才能を賞賛しました。特に与謝野鉄幹・与謝野晶子夫妻とは交流を深め、2人の間にできた双子の名付け親にもなっています。
また、鴎外の娘・森茉莉も作家・随筆家として活躍し、多くの名作を残しています。

「交響曲」という言葉を作った

ドイツへ留学した鴎外は、医学研究だけではなく、ヨーロッパの芸術にも接する事で自身の審美眼を磨きました。なかでもオーケストラコンサートには何十回も通ったほどの音楽通で、とりわけワーグナーを好んで聞いたそうです。今では当たり前となっている「交響曲」という言葉は、森鴎外による訳語だと言われています。

森鴎外のおすすめ代表作5選

森鴎外のおすすめ代表作を紹介します。どれも名作ばかりですが、いくつ読んだことがあるでしょうか。

舞姫


1890年、雑誌「国民之友」に連載された鴎外の初期の代表作です。「うたかたの記」、「文づかい」と並び、ロマンス三部作の一つとされています。鴎外がドイツ留学から帰国した翌年に書かれた作品で、学校の授業で学んだ方も多いのではないでしょうか。

ドイツ留学から帰国途中の主人公・太田豊太郎が、ドイツでの出来事を回想して筆をとるという手記スタイルで物語は展開します。美しいドイツ人女性エリスと出会い、仕事を取るか恋を取るかの葛藤に苦しむ豊太郎。そして豊太郎が下した決断が、一つの悲劇を生み出します。

鴎外が帰国後、エリスのモデルとされる人物が鴎外を追いかけて来日する「事件」が起きましたが、義弟・小金井良精(よしきよ)が対応し事なきを得たという逸話が残っています。ちなみに小金井良精はSF作家・星新一の母方の祖父です。

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山椒大夫

1915年、雑誌「中央公論」に発表された作品で、中世の演目の一つ「さんせう大夫」が元になっています。京都の由良海岸を舞台とし、悲劇的な運命に翻弄される「安寿(あんじゅ)と厨子王丸(ずいおうまる)」の童話に鴎外が小説的脚色を加えて執筆されました。

1954年に映画化された本作は、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を獲得しており、海外でも高く評価されています。

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高瀬舟

1916年、雑誌「中央公論」に掲載された鴎外後期の代表作です。この作品も江戸時代に書かれた随筆集「翁草」の中の「法人の話」を元に執筆されました。日本において初めて尊厳死(安楽死)をテーマとした作品であり、生命倫理学の分野でも扱われる名作です。

ある日、罪人を島に送るための高瀬川を下る船に、痩せた色白の喜助という人物が乗船します。これから島流しになるにもかかわらず、妙に落ち着き払い、それどころか晴れやかな表情をした喜助。そんな喜助に興味を持った護送役の同心・羽田庄兵衛は、「お前は何を思っているのか」と思わず尋ねます。すると喜助は「はい」と答え、喜助の身の上に起きた顛末を語り始めます。

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青年

1910年、雑誌「スバル」に掲載された長編小説です。1908年に発表された夏目漱石の「三四郎」に影響を受けて執筆されました。「三四郎」と同じく、青年の悩みや成長を描き、利他的個人主義を主張した作品とされています。

作家を志す青年・小泉純一。ある日劇を見に行った純一は、偶然にも坂井と名乗る美しい未亡人に出会います。坂井と親しくなった純一は、坂井を追って箱根に向かいますが・・・。

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1911年から1913年にかけて雑誌「スバル」に連載された作品で、女性の悲運を「雁」の悲劇的運命となぞらえて書かれた、鴎外後期の代表作です。

高利貸しの妾(愛人)として生活するお玉は、医学生の岡田に恋心を抱き、散歩に来る岡田を待ち伏せます。しかしいつもは1人で散歩をする岡田でしたが、お玉が待ち伏せた日に限って、友人である「僕」を連れています。結局思いを伝えられず、岡田は洋行に出てしまうのでした。

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まとめ

森鴎外の作品の特徴やおすすめ作品を紹介しました。森鴎外の作品を読むと、知識の深さや人間の心情の変化、描く景色など、どれをとっても一級品であることは言うまでもありません。夏目漱石とともに近代日本文学の礎を築いた鴎外は、漱石とは違い「前に出るタイプ」の人物だったことが、その人生や作品を通して伝わってきます。以前作品を読んだことがある方も、この記事をきっかけに、もう一度格調高い鴎外文学を味わってみてはいかがでしょうか。

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>>森鴎外ってどんな人?その生涯・家族は?性格を物語るエピソードや死因は?

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