出典:[amazon]正岡子規 名作全集: 日本文学作品全集(電子版) (正岡子規文学研究会)
正岡子規は、明治の文明開化とともに歩み、俳句・短歌・文章の革新運動を行った文学者です。
既存の常識に従うのではなく、古典を継承しつつもその時代に合った表現方法に作り変え、だれもが親しめる俳句の基礎を築きました。また、西洋からはいってきた文学に肩をならべる芸術性の高い文学に革新し、時代に埋もれようとしていた俳句を後世に残すことに貢献しました。
子規は結核を患い、晩年は脊椎カリエスとともにありながら、俳句、短歌、新体詩、小説、随筆など多岐にわたるジャンルで数多くの作品をのこしています。
今回は、正岡子規の作品の特徴や評価、おすすめ代表作をご紹介します。
正岡子規の作品の特徴及び評価
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正岡子規の作品には、1894年以降、写生という表現方法をつかったものが数多くみられます。写生とは、目の前にあるものごとを自分の眼で見たまま、感じたまま素直に描き、ものの本質を追求する子規が提唱した表現法です。つまり、個人の眼でみているというものです。淡々とそのままの情景をあらわしていて、一見浅はかにも見えますが、作品は読み手とともにつくられるので、かえって子規の感情や考え、それ以上のものを味わい深く表現することとなっています。
また、病を引き受け負の条件を逆に利用し、ものの見方や感じ方をずらした表現は、ユーモアをたたえ苦しみに打ち沈まない、しなやかな強さをかんじさせます。
そして正岡子規は、近代の俳句・短歌などの短詩型文学の礎を築いたことで高く評価されていますが、一方ですぐれた随筆などの散文も数多くあると評されています。
おすすめ代表作7選
松蘿玉液
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子規が晩年に書いた『墨汁一滴』『病牀六尺』『仰臥漫録』とならぶ四大随筆の一作め。病床に臥せる日が続き、カリエスの手術をした翌月の、1896年(明治29年)4月から12月まで、断続的に新聞「日本」で掲載されたものです。題名は、子規が愛用していた中国の墨の名前からとってつけました。内容は文学者や政治家のこと、新聞雑誌の批評、自作の俳句、庭の草花など多岐にわたります。そして大好きなベースボールの解説を、図解入りで詳細に3記事分執筆していて、野球を知らない日本人が多かった時代に、面白さをひろめようとする子規の情熱を感じます。
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墨汁一滴
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亡くなる前の年に新聞「日本」に連載された、約半年間の日記的随筆集。病が進み、気力や体力がなくなってきたため、一滴の墨を含ませた筆で書き切れる短い文章で書いた、子規のありのままの考え・姿がみられる書です。いよいよ悪化してくる病状のなかで、詩歌論(批評)や、俳句、病状のことなどいろいろなテーマにユーモアを交え「写生」しています。
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病牀六尺
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子規が亡くなる2日前まで、新聞「日本」に連載され、前出の『墨汁一滴』の翌年に書いた随筆集です。たった六尺の病床から見える世界や、会った人々、素直に描いた美しい写生、教育などさまざまな内容が執筆されています。死期迫る病床にあっても、いろいろなことに興味をもつしなやかな子規のこころが感じられる作品です。子規がいた狭い世界のなかで、かぎりなく広がる心の世界を感じとることができます。
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仰臥漫録
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永眠する前の年から亡くなる直前まで、出版を目的とせず個人的に書いていた病床での日々の記録です。詳細なその日に食べたもの、病状、スケッチ、うつくしい水彩画、俳句、会った人のこと、考えていることなど子規の生きた日々を克明に淡々とえがいています。たくさんの量を食べることや、美味しいものへの情熱に驚かされます。まさに死がせまってくる中で、正岡子規の苦しみ・絶望・感動など肉薄した感情がありありとつたわってくる随筆集です。
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子規句集
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子規の文学は、常に俳句とともにありました。近代俳句の改革者・子規の数ある俳句から、すぐれた2306句を紹介しています。読むごとにさまざまな情景や奥行きをかんじる、豊かな俳句世界をあじわうことができます。
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俳諧大要
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故郷松山で夏目漱石とすごし、結核療養を終え上京した直後の1895年10月から新聞「日本」に連載された俳論です。
絵画・彫刻・音楽・演劇・詩歌小説で構成される「芸術」のうち、詩歌小説は文学で、俳句は文学の一部であると説いています。子規は、俳句を芸術という広い目でとらえました。俳句とはどのようなものかがまとめられ、後半では俳句の作り方の具体的な要点を述べています。既存の概念などの月並を排し、写実であることを主に説きました。そして写生だけに偏らず、空想と写実を混ぜ一種、空想でも現実でもない文学をつくることが、俳句の大家に近づくことだと述べています。
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歌よみに与ふる書
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『古今和歌集』は「くだらぬ」と述べ、『万葉集』こそ素晴らしいととなえ、既存の価値観に衝撃をあたえた正岡子規の短歌革新論。起こる物事をそのまま表現する、写生論をときました。美と感じるものを、わかりやすくありのまま表現するのが主眼であると提唱しています。具体的な歌を用いながら情熱をもって論じたこの考えは明快で、現代の短歌にも通じるものがあります。
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[kindle版]再び歌よみに与ふる書
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まとめ
いかがでしたか?今回は、正岡子規の作品の特徴やおすすめ作品をご紹介しました。
俳句ということばを世の中に定着させたのは、正岡子規だといわれています。
俳句は、余白などから自由に読者が想像し、つくりあげるものです。正岡子規の俳句には、親しみやすく楽しい句がたくさんありますので、気軽にまずは一句味わってみてはいかがでしょうか。
また子規の作品には、俳句だけでなく、随筆や評論などいろいろなジャンルでユーモアをたたえ、すぐれたものが多くあります。さまざまな方向から子規の作品を楽しんでみてはいかがでしょうか。
>>正岡子規ってどんな人?本名やその生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?
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