さて、秋になると空を大群のように飛び回る赤いトンボがいますよね。あれって赤とんぼといわれているのが常識です。親がこどもに「ほら、赤とんぼ!」学校の先生が、「赤とんぼ飛んでるね。」などというから子供はあれが赤とんぼだと思ってしまうのです。
え、そうじゃないんですか?
はい。あれは赤とんぼではありません!
うん、どう見ても赤とんぼに見えますが、違うんですか?
はい。
おそらく、童謡で「あかとんぼ」という歌があるため、また小さいころから歌われてきたものですので、そこから来ているのかもしれませんが、「あかとんぼ」ではありません。強いて言うなれば、赤いとんぼというのが正解でしょう。赤とんぼになりますとその名称のトンボがいることになりますので、違うんです。
つまりは、赤とんぼという名称のトンボは存在しないのです。では、8月末もしくは稲刈りの時期から10月末にかけて平地に飛び回っているトンボはなんなのでしょうか?「アキアカネ」もしくは「ナツアカネ」です。これらは茜色をしていることから「アカネ属」に分類されるトンボで、実際は21種類もあるのです。童謡「あかとんぼ」に出てくる赤いトンボのモデルとなっているのは、秋になると体が赤く変色するアキアカネです。
初秋になると、赤いトンボ、黄色いトンボと二色のトンボがいるかと思います。この二色ともアキアカネなのですが、もともとは黄色いトンボで、春に卵からヤゴが生まれ、夏までにヤゴが羽化します。そして、普段は山や林の中で暮らしているのです。それが8月末頃になると体が黄色から赤に変色し、産卵をするため平地へ群れをなしてやってくるのです。
そして、稲刈りが始まる9月ごろになると、数が多くなり、田舎に行くと本当にトンボだらけで凄いことになっているのですが、その頃に、ため池や比較的水の流れが激しくない川に、卵をうみます。流れが激しい川ですと卵が流れてしまい死んでしまいますのであまり適さないのですね。その後、成虫であるトンボは死に、卵に冬を越してもらうのです。そしてまた春になると、ヤゴが生まれ、トンボになると、生命のサイクルを行っているんです。
だけど、当然ながら、産んだ卵全てが帰るわけではなく、中には魚に食べられたり、環境に適応できず死んでしまうものがほとんどです。その生き残ったものがトンボになり、そのトンボも、鳥に食べられたり、かまきりに食べられたり、と天敵の餌食になるので、大量のトンボのなかの本当に一部のトンボだけが卵を産むわけです。多くは産む前に死んでしまいます。
かわいそうな話しかもしれませんが、自然界というものは大体そういうものです。
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