出典:[amazon]きまぐれ星からの伝言 (文芸書)
小松左京や筒井康隆と並び、日本を代表するSF作家星新一。作品の多くが一般的な短編よりもさらに短い「ショートショート」の作風で人気を獲得し、「ショートショートの神様」と言われています。生涯で1000作以上の作品を残しており、現在も多くの短編集が、子供から大人まで幅広い読者に愛されています。星新一の作品が今もなお読者を魅了し、親しまれている理由はどこにあるのでしょうか。今回は星新一の作品を紹介しながらその謎に迫ってみたいと思います。
星新一の作品の特徴や評価
星新一の作品や特徴について解説します。星新一の魅力はどんなところにあるのでしょうか。
切れ味抜群のオチが魅力。誰にでもわかりやすい文体で読む人の想像力をつかむ。
小中学生の時に初めて読んだSF作品が星新一の「ショートショート」という方も多いのではないでしょうか。星新一は作品を執筆する際、大きなこだわりを持っていました。それが何かというと、
- 原稿用紙10枚から20枚以内(もっと短いのもある)
- 固有名詞は使わない
- 性や殺人は扱わない
- 当用漢字しか使わない
などです。作品作りに対してこれらの制約をかけることで、どの年齢層にも受け入れられ、さらに地の文を平易な言葉で書くことにより、読み手の想像力に直接的に届くという効果を生み出しています。他のSF作家の作品には難しい設定や複雑なプロット(構成)、難解な科学用語が飛び交っていますが、そうした中で、だれでも読めて、すぐに読める作品を提供したのは、星新一のドンピシャな狙いだったと思われます。
ショートショート1000作目の発表を機に星新一は休筆宣言を出しましたが、休筆後はおもに過去作品の改訂に取り組んでいます。これは自分の作品がテクノロジーの発達とともに「古臭く」なっていくのを防ぐためでした(限界はありますが)。こうした何気ない作業によって、星新一の作品は時代や状況の変化に影響を受けにくい「誰からも愛される」作品として今でも子供から大人までの多くの読者に愛されています。
星新一の評価について
星新一の評価はさまざまですが、ここでは星新一が受賞した賞をご紹介します。
- 直木賞候補
- 第15回日本推理作家協会賞候補
- 第18回同賞候補
- 「妄想銀行」で第21回同賞受賞
- 日本SF大賞受賞(死後)
こうしてみると、「意外に賞を受賞していないな」と思われるのではないでしょうか。有名SF作家が多く受賞している「星雲賞」なども星新一は受賞していません。この理由としては、星新一が発表した作品の多くが「ショートショート」であったためと考えられます。「ショートショートの神様」と言われるほど卓越したアイディアと才能を備えていた星新一ですが、作品として考えた時、どうしても「文学性」が求められます。そういう意味で、受賞歴が少ない(本人辞退によるものもありましたが)のかもしれません。しかしだからといって、星新一のユーモア溢れるセンスは失われることはなく、同時代の作家や、晩年の谷崎潤一郎もショートショートを愛読したと言われています。
おすすめ代表作6選
星新一は作品数が多いので迷いました。もしかしたら全部読んだ方もいるかもしれませんが、ぜひ改めて星新一の作品に触れてみてください。
城のなかの人
タイトルの作品を含む時代短編小説です。主人公は豊臣秀吉の息子・秀頼(ひでより)。秀頼は大阪城で生まれ、父秀吉の保護の元、不自由のない生活を送っていました。しかし時は戦乱の世。いつ何時、敵が攻めてくるかわかりません。そんな中、豊臣家を「城の外の人」徳川家康が攻め込みます。
その他、「春風のあげく」「すずしい夏」などの作品が収められています。
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ボッコちゃん(短編集)
星新一の作品で最も有名な作品の1つです。まさに星新一ワールド全開の発想と、最後の悲しいオチが人間の愚かさを絶妙に表現しています。ネタバレになってしまいますので詳しくは書けませんが、「ボッコちゃん」とは精巧に作られた女性型アンドロイドです。そんなアンドロイド「ぼっこちゃん」に惹かれていく主人公。そして最後に取った主人公の行動が大きな悲劇を引き起こします。
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声の網
舞台は近未来。作中に登場する「電話」は、さまざまな機能を兼ね備えた万能アイテム。銀行の払い込み、音楽、体調の管理など、「電話」はなんでも叶えてくれます。そんな「電話」と「機械」に依存している人間たち。行き過ぎた技術と情報社会がもたらす弊害が、メロン・マンションの住人を通して描かれています。現代のインターネット社会を予見した、星新一の想像力がさえわたる短編集です。この作品が書かれたのが今から半世紀前の1970年なので、星新一の先見の明には舌を巻いてしまいます。
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エヌ氏の遊園地
星新一作品ではお馴染みの「エヌ氏」が登場します。1000作以上執筆した作品の1割以上に「エヌ氏」が登場するそうなので、よほど愛着があったキャラクターなのでしょう。「殺し屋ですのよ」、「うらめしや」、「人質」など、奇想天外なアイディアとユーモア(ブラックを含む)がつまった珠玉の短編集です。
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ようこそ地球さん
大人のための寓話集が42編収録された短編集です。一般に小・中学生に人気のある星新一作品ですが、ここであえて「大人のための」と紹介されているところがポイントです。個人的なオススメ作品は、罪を犯したものが別の星に島流しとなる「処刑」です。別の星に送られた罪人には「銀の玉」が渡されますが、この銀の玉にはスイッチがついていて、押すと生きるために必要な「飲み水」が出てきます。しかしこの銀の玉には、犯罪者も恐れる仕掛けが施されていたのでした。
ブラックユーモアな作品ですが、「生きる」こと「死ぬこと」の意味を考えさせられる作品です。
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妄想銀行
1967年に刊行され、この作品により星新一は日本推理作家協会賞を受賞しました。
タイトル作品を含む32編の短編集です。星新一の作品に対していつも思うのは「タイトルの秀逸さ」です。冴のあるタイトルだけで、「どんな内容なのか」という好奇心が湧いてしまいます。
妄想を吸収して管理する「妄想銀行」。人の妄想をカプセルに詰めることで、他人も飲めるというビックリな物語です。未読の方はぜひ。
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まとめ
いかがでしたか。星新一の特徴が少しでも伝われば幸いです。平易な文章でありながら、中にはブラックな作品もあり、そのギャップが星新一の魅力の1つではないかと思います。今回ご説明した内容は星新一の魅力のほんの一部ですが、この記事を読まれた方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
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