出典:[amazon]われらの時代に ヘミングウェー短編集1
今回はアーネスト・ヘミングウェイの作品の特徴及び評価やおすすめの代表作について紹介します。
アーネスト・ヘミングウェイの作品の特徴及び評価
ここでは、ヘミングウェイの代表作を4篇紹介します。どの作品も非常に有名なものばかりですが、読みやすい簡潔な文章と登場人物に意識されたイメージの明瞭さがみられます。ヘミングウェイの人生体験が様々なところに反映されたものが多く、先にご紹介したヘミングウェイの生い立ちについて読むと、より楽しい時間になると思います。
おすすめ代表作4選
ここではヘミングウェイの代表作4選をご紹介します。
日はまた昇る
「ああジェイク」ブレットが言った。「私たち本当に楽しく過ごせたはずなのに」…「そうだね」ぼくは言った。「そう思うと、すてきだね」(『日はまた昇る』より抜粋)
「ロスト・ジェネレーション」、失われた世代という言葉は、先の大戦で生きる目的を失った人々、特に若者に対して使われた流行語です。本作の主人公とヒロイン、新聞記者ジェイクと篤志看護師ブレットの恋愛を描いた作品ですが、よりメタにみれば、ヘミングウェイの当時の人々を見て描きたかったメッセージが作品内に漂っています。現代にもあるような無気力、理想像との乖離、孤独さに対する筆者の思考が強く反映されています。私たちはSNSやメディアを手にし、皮肉にもいかに孤独であるかを知りました。イカロスになれないジェイクとブレットは、ヘミングウェイの伝えるメッセージを現代に代弁しているのでしょうか。
ヘミングウェイの作家として前半のキャリアにおける一作です。同時に彼の現実に対する鋭い観察眼が社会に広く知られるようになったきっかけでもあります。
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武器よさらば
「ぼくの人生には何でもいっぱいあった。…今では君がいないと、ぼくには何もないんだ」(『武器をさらば』より抜粋)
ヘミングウェイが経験した従軍体験が霧のように薄く漂う一作です。戦争からの脱走兵フレデリックと従軍看護婦のキャサリンの恋愛を描いた作品ですが、『日はまた昇る』で得た現実認識を、自己観察を通してとらえようとしているヘミングウェイの姿があります。
現代では非常にありふれた作風ですが、特徴である過去の自分を回想しつつ現在の視点で主人公が語るスタイルは、自己観察に非常にあっていたようです。フレデリックは、戦争という社会とのかかわりに辟易し、それを断つことで自身の前に広がる孤独に思いを馳せます。その主人公に、ヘミングウェイも姿を重ねていたのでしょう。
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誰がために鐘は鳴る
「ぼくは、この一年、自分が信ずるもののために戦ってきた。ここで勝つなら、ぼくたちはどこでも勝つだろう。この世は素晴らしいところで、そのために戦うに値するのだ。僕は、どうしてもこの世界を去りたくない。」(『誰がために鐘は鳴る』より抜粋)
社会から逃げるこれまでの主人公と違い、たちむかう主人公ロバートの視点で物語は進みます。ゲリラの捕虜マリアとの恋愛を描きつつ、任務のために橋を爆破しようと試みるロバートが、その作戦の真実に気づいてもなお、戦争という社会にしがみついて踏ん張る姿があります。
主人公ロバートが、作戦のため、軍のために自身の命すら投げ出す姿は、ヘミングウェイの社会に対する姿勢が決定的に変化したことを感じさせるのです。
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老人と海
「人間はひどい目にあうかもしれない。でも負けはしないんだ」(『老人と海』より抜粋)
社会に対する不信と精神衰弱、病に侵された中で発表された奇跡の一作とすら言える作品です。老漁師サンチャゴが孤独な船の上で繰り広げる、巨大魚との崇高な戦いの物語です。ヘミングウェイがたどり着いた答えは、人間としての尊厳や勇気を称賛し、その中に社会の評価は一切関与しないというものでした。勇敢なサンチャゴの結末は、観光客の女と彼自身のそれぞれで考えが異なるものです。結果とその中で行われた戦いの対比こそ、彼が描きたいものを締めくくるテーマを暗に示しています。
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終わりに
今回はアーネスト・ヘミングウェイの代表作を紹介していきました。もちろんノーベル賞受賞作である「老人と海」は有名です。しかし、ほかの作品は現代社会に生きる私たちの生き方に一石を投じる傑作であろうと思います。今回は時系列順の紹介でしたが、どの作品から呼んでも非常に考えさせられ、水を差さずに興奮を与えてくれるものばかりです。短編を多く残しているので、そちらも読んでみるとヘミングウェイの世界がより鮮明になっていくでしょう。
>>アーネスト・ヘミングウェイってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや作品の特徴は?
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