大庭みな子の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作6選

出典:[amazon]性の幻想―大庭みな子対談集

大庭みな子は戦時中に女学生時代を過ごした「内向の世代」と呼ばれる時期に活躍した女流作家で、女に関する作品が多く、フェミニズムにも関心がありました。今回は大庭みな子の作品の特徴及び評価、おすすめ代表作をご紹介します。

大庭みな子の作品の特徴及び評価

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大庭みな子は女性に関する作品が多いことでも有名ですが、ここでは作品の特徴や評価を見ていきましょう。

大庭みな子、作品の特徴

大庭みな子の文学は「内向の世代」とも呼ばれており、政治や社会への無関心や内面的なテーマの扱い方に特徴があります。「内向の世代」は1930年代に生まれ、1965年からの10年間に台頭した作家たちを指す言葉で、子供の頃の戦争体験が大きく影響を与えています。大庭みな子は広島での悲惨な戦争体験があり、作品に直接反映されている訳ではありませんが、影響を及ぼしていることは確かです。

大庭みな子の作品は、内面への道と外界の道が平行して描かれており、透過性のある膜のようなもので行き来できる、境界が曖昧で夢幻的な感覚があることも特徴です。それは目の前の現実と内面の意識であったり、過去と現在であったり、夢と現実であったりと物語によってかたちを変えています。
また、フェミニズムに関する発言も多いのが特徴です。

大庭みな子、作品の評価

大庭みな子の作品は、デビュー作の『三匹の蟹』で群像新人文学賞と芥川賞を受賞して話題になったことから始まりました。アメリカからの帰国後も『『がらくた博物館』で女流文学賞、『寂兮寥兮(かたちもなく)』で谷崎潤一郎賞を受賞し、『啼く鳥の』で野間文芸賞、『津田梅子』で読売文学賞、『浦安うた日記』で紫式部文学賞を受賞するなど多くの賞を受賞しました。

また、脳梗塞で倒れてからは夫の利雄氏の後述筆記での執筆活動になり、その夫婦の関係が評判にもなりました。

大庭みな子のおすすめ代表作6選

大庭みな子は、衝撃的なデビュー作をはじめ、多くの作品を発表しました。小説が多いですが、対談や翻訳などもあります。ここではおすすめ代表作をご紹介します。

三匹の蟹

大庭みな子のデビュー作であり芥川賞を受賞した作品。アメリカで暮らす由梨という主婦が主人公で、あるとき夫と自分、双方の浮気相手が集うホームパーティーに参加することになるものの、行く気にならずひとりで外出してしまいます。そこでアメリカ男と出会い、海辺のドライブに行き、さらに赤いネオンが点滅している宿「三匹の蟹」へ行こうと誘うのでした。存在の孤独感や愛の倦怠が乾いた筆致で描かれています。会話や情景の美しさに引き込まれながらも、他者との関係性の異質さと孤独感が漂う作品です。

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寂兮寥兮(かたちもなく)

性と死、人間の存在の不確実性を描いている谷崎潤一郎賞受賞作品です。幼馴染の万有子と泊は、ごっこ遊びの延長のような微妙な愛情関係にありましたが、それぞれの夫と妻の裏切りの死を契機に物語は展開していきます。二人を軸に織りなす人間模様は、夢や神話の世界が現実世界と混じり合う独特の世界観です。

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津田梅子

津田梅子は日本最初の女子留学生としてアメリカに11年滞在し、帰国後は生涯独身を通しながら教育に身を捧げ、津田塾大学を創設しました。日本における女子教育の先駆である人物です。日本に戻ってから、ホームステイ先の夫妻に送った膨大な量の手紙を紐解きながら、津田塾大学の卒業生である大庭みな子が津田梅子の生涯を追いかけた一冊です。

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むかし女がいた


女の根源的な残酷さ、愚かさ、愛おしさを、寓話的な筆致で描いた物語と詩の短編集です。
表題の通り、さまざまな女が登場し、戦争が終わって敵国の花嫁となった女、義弟を誘惑し愛人にした女、男の機嫌を取る女、男に嘘をつく女、子を産む女産まない女など、幾人もの女の生き方を描いています。

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最後の桜—妻・大庭みな子との日々(大庭利雄)

大庭みな子の作品ではなく、みな子を支え続けた夫・利雄が、妻と過ごした58年の濃密な夫婦の歳月を描く感動作です。みな子が半身不随となった晩年の10年間、献身的な介護で支え、口述筆記で執筆活動を続けていました。夫から亡き妻への永遠の恋文とも言えます。二人の夫婦関係や人柄、乗り越えてきたものなどが語られています。

風紋

大庭みな子最後の作品。没後に絶筆となった3つの短編と6つのエッセイ、夫の大庭利雄が綴ったエッセイ「おかしなおかしな夫婦の話」が収められています。表題作の「風紋」は親交が深かった作家の小島信夫へのみな子の想いを綴った小説であり、晩年だからこその深みが伝わる一冊です。

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まとめ

大庭みな子は、衝撃のデビュー作から始まり、夫との二人三脚での執筆の晩年というドラマチックな作家人生とも言える人物でした。夢と現実が入り混じったような作品の独特の世界観や「女とは?」と考えずにはいられなくなるような作品、「津田梅子」のような実在の人物についての歴史的な話などさまざまな作品がありますので、気になるものから読んでみてください。

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>>大庭みな子ってどんな人?その生涯は?結婚や子供は?性格を物語るエピソードや死因は?

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