笹沢左保の作品の特徴及び評価。おすすめ代表作5選

出典:[amazon]縁は異なもの

「木枯し紋次郎」や「夜明日出夫シリーズ」などで知られる笹沢左保。40年以上にわたるキャリアのなかで400近い作品を執筆し、そのジャンルは本格ミステリーや歴史小説、エッセーなど多岐に及びます。また笹沢の作品の多くはテレビドラマや映画になっており、映像の分野でも私たちを楽しませてくれています。膨大な数の作品を執筆した笹沢の作品にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は笹沢左保の作品の特徴や、おすすめ代表作を紹介します。

笹沢左保の作品の特徴と評価について

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笹沢左保の作品の特徴について解説します。1人の作家として、信念の硬い人物だったようです。

ミステリー的手法を軸にした作品作り

笹沢左保といえば「木枯し紋次郎」を思い浮かべる人も多いと思いますが、笹沢はあくまでも「ミステリー」作家であり、ミステリーを基軸とした作品作りにこだわりました。「木枯し紋次郎」は、股旅物(またたびもの)と言われる時代小説ですが、そのなかで紋次郎がニヒルに「事件を解決」する様は、本格ミステリー作品さながらの謎解き劇を思わせます。

また、もう一つ笹沢が重要視したのは「リアリティの追求」でした。作品内で描かれる物語が、あたかも現実に起きているかのような錯覚を抱かせ、読者を作品に引き込む。笹沢は空想的で奇想天外な作品よりも、よりリアリティのある作品を読者に提供し、その緻密なプロットは多くの読者から評価されました。

新本格派のホープとして

1960年、「招かれざる客」でデビューした笹沢は、その後も「人喰い」「断崖にて」「暗い傾斜」など次々と作品を発表します。いずれの作品も高く評価され、笹沢はいつしか「新本格派のホープ」と称されるようになりました。

新本格派とは、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」が始まりとされ、謎解きやトリックに重点を置く作家たちを指します。日本においては江戸川乱歩や横溝正史などが新本格派初期の代表者と見なされているようです。笹沢が「新本格派のホープ」と称されたのは、推理小説の枠組み(定義)が広がり、謎解きやトリックに重点を置く作品が減りつつあることが背景にあったのかもしれません。

後進の育成にも尽力

生涯で400作近く執筆した笹沢左保。晩年は佐賀県に移住し、この地で執筆活動に専念しました。その後笹沢は「九州さが大衆文学賞」の設立や運営に携わり、亡くなるまで後進の若い作家の育成に尽力しました。残念ながらこの文学賞は2017年に幕を閉じましたが、2022年1月に「塞王の楯」で直木賞を受賞した今村翔吾氏も本文学賞の受賞者として名を連ねています。

笹沢左保のおすすめ作品5選

笹沢左保のおすすめ作品を簡単に紹介します。初期の本格ミステリーから時代物まで、笹沢の作品はジャンルが豊富です。

木枯らし紋次郎シリーズ

笹沢左保のことは知らなくても、「木枯し紋次郎」の名前は聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

三日月村の貧しい農家に生まれた紋次郎。10歳で生家を後にした紋次郎は、各地へ放浪の旅にでます。やがて渡世人(とせいにん)として知られるようになった紋次郎は、行く先々で事件に巻き込まれます。天保から幕末までの時代を背景に、ニヒルな紋次郎の活躍が冴え渡ります。

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死人狩り(しびとがり)

1964年5月から11月にかけて雑誌「平凡パンチ」に連載された作品です。笹沢初期の代表作として現在も読み継がれています。

西伊豆を走行中のバスが崖下に転落し、乗客27人が転落死するという事故が発生しました。事件発生当初は事故として処理されるはずでしたが、バスに散弾銃が撃ちこまれていたことが判明し、事件へと発展します。被害者の中には、静岡県警で刑事を務める主人公・浦上の妻子も含まれており、浦上は事件解決のために奔走します。

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剣士燃え尽きて死す

1976年に新潮社から出版された作品です。常に明るく、周りからも愛されていた天才剣士・沖田総司。しかしそんな表向きの表情とは裏腹に、沖田は人を斬り続けることの罪悪感に心が蝕まれていきます。土方からの疑いの目や隊内でのいざこざ、さらには近藤勇の自分に対する態度から、沖田は精神的に追い込まれ、やがて病床に伏せるようになります。

新撰組を描いた作品は多くありますが、天真爛漫ではない内的葛藤に苦しむ沖田像を描いたのは、笹沢ならではの巧さと言えるでしょう。

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招かれざる客

1960年に出版された笹沢デビュー作です。本作により、笹沢は江戸川乱歩賞の次席を獲得しています。密室、暗号、アリバイ、謎解きなど、本格ミステリーの要素がふんだんに盛り込まれた笹沢初期の傑作です。

労使交渉のスパイだった鶴飼が何者かによって殺されます。そして殺された鶴飼の手には友人・亀田の名刺が握られており、裏には謎の暗号文が・・・。

本作は「事件」と「特別上申書」の二部構成となっており、「特別上申書」では、捜査一課の警部補・倉田の推理が事件の犯人を追い詰めます。

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どんでん返し

6つの短編ミステリーが収められた短編集です。笹沢は実験的な試みをしたことで知られていますが、この「どんでん返し」もその一つです。タイトルの通り、それぞれの作品にはどんでん返しが用意されていますが、それ以上に見事なのはすべての作品が「会話のみで構成されている」点です。会話文のみで作品を構成するのは、かなり高度な表現力が求められますが、笹沢はそれを違和感なく見事に達成しています。

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まとめ

笹沢左保の作品を紹介しました。今回紹介した作品を通して、笹沢作品の多面性を少しでもお伝えできれば幸いです。笹沢はさまざまなジャンルを執筆することで、自身の作家としての可能性や、新しい表現を追求したのかもしれません。今回紹介した作品以外にも、笹沢は多くの作品を残していますので、この記事を機会にぜひ他の作品も読んでみてください!

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>>笹沢左保ってどんな人?その生涯・家族は?性格を物語るエピソードや死因は?

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