オットリーノ・レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」、「ローマの松」の解説。分析。聴きどころや難易度は?

出典:[amazon]Concerto Gregoriano / Poema Autunnale

オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)はイタリアの作曲家です。比較的遅咲きの作曲家で、作曲家として名を成したのは30を過ぎてからでした。
作曲家としてまだまだこれからという時に風邪をこじらせてこの世を去っていることもあり、レスピーギの作品にはあまり有名なものがありません。

今回はその中でも特に知られている<<ローマ三部作>>より第一部の<<ローマの噴水>>、第二部の<<ローマの松>>を取り上げ、解説していきます。

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<<ローマの噴水>>(1914-16)

<<ローマ三部作>>の第一部である<<ローマの噴水>>ではローマにある4つの噴水をテーマに曲が構成されています。

作曲家として駆け出しのころの作品

レスピーギは1910年にオペラ「セミラーマ」を作曲、発表し、作曲家としての名声を得ました。「セミラーマ」もそうですが、1910年代のレスピーギの作品は、師匠と仰いでいたリムスキー=コルサコフの影響が色濃く表れており、管弦楽のメロディの豊かな色彩が非常に印象的な作品に仕上がっています。

<<ローマの噴水>>はレスピーギ独特の叙情性がよく描かれている作品でもあり、レスピーギの代表作にふさわしい一品となっています。

構成と難易度

交響詩というと自由な構成で作られていることがほとんどなのですが、レスピーギの交響詩<<ローマ三部作>>は古典的な交響曲のように4部構成を取っています。
各部にはそれぞれ作曲者によって標題が付けられています。

<<ローマの噴水>>の構成は以下の通りです。

第1部 夜明けのジュリアの谷の噴水
第2部 朝のトリトンの噴水
第3部 真昼のトレヴィの泉
第4部 黄昏のメディチ荘の噴水

となっており、4つの噴水がメインというよりも、それぞれの時間帯に重きが置かれているのではないかと言われています。

それぞれの時間の中でゆったりした音楽、流れるような音楽、幻想的な音楽などが表現されており、非常にロマンチックです。

<<ローマの噴水>>は、<<ローマ三部作>>の中でも特に印象派に近いメロディを持っており、繊細さがキーとなる音楽で溢れています。その点で、三部作の中ではもっとも難しい、演奏しにくい(表現しにくい)作品だと言われることが多いです。

<<ローマの松>>(1923-1924)

<<ローマの松>>はイタリアカサマツと呼ばれる松の木をイメージして書かれていますが、音楽の内容は松の木のものではないのです。

古代と現在の融合を試みた作品

<<ローマの松>>は、「松」というものの、松の木そのものについての音楽ではなく、過去からずっとローマを見守ってきた松、ローマの歴史を描き出しています。

レスピーギはボローニャ出身ですが、ローマを訪れた際、ローマに染み込んだ歴史、文化、風土すべてに魅せられ、ローマに永住することを決めました。
ローマ愛が高まっていたレスピーギは、特に古代ローマから今に至るまでの歴史、変化に興味持ち、音楽も含めた歴史の勉強、研究に励みました。

そして、ローマの道々でよく見かける「松」こそ、古来よりそこに根差し、ローマの長く、栄光あふれる歴史を見てきたのだという結論に至ったのです。

こうして作られたのが、松を通して古代に思いを馳せた作品、<<ローマの松>>だったのです。

古代への思いが強いせいか、教会旋法やグレゴリオ聖歌の旋律が巧みに用いられており、第一部の<<ローマの噴水>>とはまたガラリと印象が変わった作品に仕上がっています。

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構成と難易度

<<ローマの松>>も<<ローマの噴水>>同様、4部構成で作られています。
その構成は以下の通りです。

第1部 ボルゲーゼ荘の松
第2部 カタコンバ付近の松
第3部 ジャニコロの松
第4部 アッピア街道の松

古代ローマ時代に、戦の際に兵士を鼓舞するために用いられたとする金管楽器「ブッキーナ」と呼ばれる楽器が用いられたり、ナイチンゲールの鳴き声が用いられたりと、ユニークな演出もこの作品の魅力の一つと言えるでしょう。

叙情的でありながら、第一部に比べて動的な部分も多く、小規模ながらドラマ性も感じられる作品に仕上がっています。

オーケストレーションが明確で、かつストーリー性も見えやすいので、<<ローマの噴水>>よりはイメージがつかみやすく、演奏しやすいと言われています。

まとめ

オットリーノ・レスピーギの代表作について、<<ローマ三部作>>から第一部<<ローマの噴水>>、第二部<<ローマの松>>を見てきました。

第一部と第二部の間には10年の空白があり、この間にレスピーギの作風がコルサコフ風からより古典的になったことがよく分かります。

ちなみに、第三部は<<ローマの祭り>>といい、古代ローマ、ロマネスク、ルネサンス、20世紀のローマ、と4つの各時代のローマのお祭りをテーマに書かれています。

イタリアらしく、キリスト教色の濃いお祭りばかりが取り上げられていますが、この第三部に関してはイタリア礼賛色が濃いことから演出が控えられる傾向にあります。
というのも、この作品はファシズムとの関連が強いことが指摘されており、<<ローマ三部作>>としながらも、ちょっと毛色の違う作品に仕上がっているからなのです。

<<ローマの祭り>>は実は録音でも避けられる傾向が強く、「<<噴水>>と<<松>>はあるのになんで<<祭り>>がないんだろう」というCDは意外と多いです。

レスピーギがムッソリーニと協調していたという話は有名なので、そのことも第三部を皆が避ける原因になっているのではないでしょうか。

YouTubeでは第一部、第二部、第三部全て聴くことができるので、気になる方はぜひ一度通しで全三部を聴いてみてください。

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>>オットリーノ・レスピーギってどんな人?その生涯は?性格を物語るエピソードや死因は?

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