出典:[amazon]東野圭吾公式ガイド 作家生活35周年ver. (講談社文庫)
日本ミステリー界を牽引する作家・東野圭吾。ミステリーファンならずとも、東野作品を読んだことがある人は多いと思います。なかでも物理学者・湯川学が科学の力で事件を解決する「ガリレオシリーズ」や加賀恭一郎が活躍する「新参者」シリーズは、テレビドラマや映画にもなり一大ブームを巻き起こしました。緻密なトリックと、視覚的な文体で読者を引き込む東野作品は、一度読みだすとページをめくる手が止まらなくなります。そこで今回は、令和になった現在も作家として第一線で躍進し続ける、東野圭吾のプロフィールやおすすめ代表作を紹介します。
東野圭吾のプロフィールや経歴は?
大人気作家東野圭吾のプロフィールについて紹介します。意外にも文学青年ではなかったようで、作家としてブレイクするまでには長い時間がかかりました。
大阪に生まれる
東野圭吾は1958年(昭和33年)、大阪府生野区(いくのく)に生まれます。小学生の頃は漫画が大好きな少年だったようで、東野自身も漫画を書くのが趣味でした。「何かを創造する」という訓練は、漫画を書くことで養われたのかもしれません。また、後に大ベストセラーとなる『白夜行』や『浪花少年探偵団』の舞台は、東野圭吾が幼い頃に過ごした生野区がモデルになっていると言われています。この街で小学校・中学校を卒業した東野は、高校生になると、ある衝撃的な出会いをします。ちなみに、エッセイ『あの頃僕はアホでした』によると、中学時代の成績は「オール3」という平均的すぎる青年だったそうです。
高校時代・ミステリーと出会う
大阪府立阪南高校に進学した東野圭吾は、高校2年の時に1冊の小説と出会います。それは『クレオパトラの黒い溜息』や『ピタゴラス豆畑に死す』などの作品で知られる、ミステリー作家・小峰元の代表作『アルキメデスは手を汚さない』との出会いでした。この作品に衝撃を受けた東野圭吾は、自身もミステリー作家を志すようになります。またこの頃は松本清張の「社会はミステリー」を読み耽っていたそうです。『祈りの幕が下りる時』などの社会問題を背景にした作品作りの手腕は、この頃に養われたのかもしれません。
社会人として働きながら執筆を続ける
大阪府立大学工学部電気工科に進学した東野圭吾は、アーチェリー部の主将になるなど、学生時代を謳歌していたようです。デビュー作『放課後』でアーチェリー部が登場するのは、東野自身の体験が反映されています。大学卒業後、1981年に日本電装株式会社(現デンソー)に入社した東野は、社会人として働くかたわら、小説を執筆します。1983年『人形たちの家』で第29回江戸川乱歩賞に応募するも2次通過で落選。翌1984年には『魔球』で最終候補者まで残りましたが、惜しくも落選します。しかし1985年に再度応募した『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、東野圭吾は念願の作家デビューを果たします。そして1986年に会社を退社した東野圭吾は、職業作家としての活動を始めます。
『秘密』でブレイク!
『放課後』で注目を浴びるも、それ以降はなかなかヒット作に恵まれず東野圭吾にとって試練の時期が続きます。そんな厳しい時代が続いた東野圭吾でしたが、1996年に発表した『名探偵の掟』が「このミステリーがすごい!1996年版」(通称このミス)で3位となり、ここから東野圭吾の快進撃が始まります。1998年には初期の代表作『秘密』が日本推理作家協会賞を受賞。東野圭吾は一気に人気ミステリー作家の道を駆け登ります。本作は翌年1999年に映画化され、東野圭吾の知名度も広く一般に知れ渡るようになります。
そして2006年、ガリレオシリーズの3作目である『容疑者Xの献身』でついに第134回直木賞を受賞。これと同時に第6回日本ミステリ大賞も受賞し、本作が累計290万部を売り上げるなど、ベストセラー作家として名を連ねるようになります。
第一線の作家として活躍。海外でも根強い人気を獲得する
東野圭吾は直木賞受賞後も次々と話題作を発表し、2008年に発表した『流星の絆』で第43回新風賞を受賞。2013年には『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、2014年には『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞するなど、数々の文学賞を総なめしています。
また、『容疑者Xの献身』がアメリカの優れたミステリー作品に授与される「エドガー賞」にノミネートされるなど、東野圭吾の作品は海外でも高い評価を受け、名実ともに日本を代表する推理作家として今日に至ります。
2009年からは大沢在昌から引き継ぎ、日本推理作家協会理事長に就任。2014年からは直木賞選考員になるなど、東野圭吾は現在も精力的に活動を続けています。
東野圭吾は結婚してる?
調べたところ、東野圭吾は1980年代初めに結婚していたそうです。江戸川乱歩賞を受賞した『放課後』の主人公・前島の女子校勤務という設定は、東野圭吾の妻が女子校の非常勤講師だったことから着想を得たと言われています。しかしその後、1997年に離婚しています。そのことについては、エッセイ『たぶん最後の御挨拶』の中で少しだけ触れられています。
おすすめ代表作8選
東野圭吾のおすすめ作品を紹介します。およそ90作を超える中から、特におすすめ作品を選びました。もちろん他にも面白い作品がたくさんありますので、今回紹介する作品は、あくまでも筆者目線であることをご了承ください。
放課後
女子校に勤務する主人公・前島が、勤務する女子校で起きる難事件を解決するミステリーです。この作品により東野圭吾は江戸川乱歩賞を受賞し、作家デビューを果たします。作品には東野圭吾が学生時代に所属していたアーチェリーが取り上げられています。発表された翌年(1986年)には早くも映像化された初期の人気作であり、ミステリー作品らしい密室トリックが冴える作品です。
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探偵ガリレオ
天才物理学者・湯川学が活躍する東野圭吾の大人気シリーズです。このシリーズについて東野圭吾は「自分の好きなようにマニアックな作品を書いた」と語っています。短編集として発表された『探偵ガリレオ』は5章構成になっており、それぞれ、第1章「燃える」、第2章「転写る(うつる)」、第3章「壊死る(くさる)」、第4章「爆ぜる(はぜる)」、第5章「離脱る(ぬける)」という独特なタイトルが付けられています。天才物理学者・湯川学の超推理が読者を引き込みます。
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容疑者Xの献身
ガリレオシリーズ3作目の作品です。東野圭吾をもっとも代表する作品といっても過言ではないでしょう。この作品により東野圭吾は第134回直木賞を受賞し、その他、第6回本格ミステリ大賞も同時受賞しています。さらに『このミステリーがすごい!2006年』版や『本格ミステリー・ベスト10・2006年版』でも1位を獲得するなど、この年のあらゆる賞を総なめにしました。同タイトルで2008年に映画化された本作は大ヒットとなりました。アメリカの権威あるミステリー賞である「エドガー賞」にもノミネートています(受賞ならず)。一度は読んでおきたい必読書です。
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どちらかが彼女を殺した
加賀恭一郎を主人公とした「新参者」シリーズの3作目の作品です。出版年度は意外に古く、1996年に講談社ノベルスで刊行されており、筆者も学生時代に夢中になって読んだ記憶があります。
ある日、愛知県警の交通課に所属する和泉康正の元に、東京で暮らす妹・園子から一本の電話が入ります。妹の落胆した雰囲気を心配した兄・康正は、妹を訪ねて東京のマンションに向かいますが、そこで見たものは園子の変わり果てた姿でした。当初は自殺と考えられましたが、捜査が進むうちに二人の容疑者が浮かび上がります。
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祈りの幕が下りる時
2013年に発表された、加賀恭一郎シリーズ10作品目を飾る作品です。本作では『卒業』や『赤い指』などでわずかに語られていた加賀の母親が登場し、その失踪の理由が語られます。緻密なプロットや人物描写の妙など読み応え抜群の作品ですが、それだけでなく、本作はミステリーの枠組みを超え、親子愛をテーマにした作品でもあります。2018年には映画化され大きな話題となりました。
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白夜行
1999年に発表された長編小説です。ロングセラー作品としても知られており、2010年代には200万部を超える大ベストセラーとなりました。こちらはシリーズ作品ではありませんが、東野圭吾をもっとも代表する作品の一つです。
1973年の夏、大阪の廃ビルで殺人事件が発生。捜査線上には複数の容疑者が浮かぶものの、事件は未解決のまま迷宮入りとなります。そんななか、被害者の息子と容疑者の娘の周りで不可解な事件が発生するも、証拠不十分により19年の歳月が経過します。巧妙に仕組まれた伏線と緻密なストーリー、そしてドラマチックな展開が、読む人の心を捉える東野圭吾屈指の名作です。
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秘密
1985年、『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞した東野圭吾。その後はなかなかヒット作に恵まれない時期を過ごします。しかし1990年代後半、『名探偵の掟』が「このミステリーがすごい!」で3位に選出されると、徐々に人気が高まり始めます。そんな中、1998年に発表したのが本作『秘密』です。この作品により東野圭吾は日本推理作家協会賞を受賞し、一躍人気作家の仲間入りを果たします。
こちらの作品も1999年に映画化されています。本作には「運命は、愛する人を二度奪っていく」というキャッチコピーが付けられており、「秘密」のタイトルの意味を知った時、あなたにはきっと大きな感動が訪れるでしょう。
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マスカレード・ホテル(シリーズ)
2010年度から開始された東野圭吾の新たなシリーズです。作家生活25周年記念の3作目として発表され、こちらのシリーズも根強い人気を獲得しています。ホテルマンとして潜入捜査をする新田浩介とその教育係である山岸尚美が、連続殺人事件の真相に迫ります。2019年に映画化され、映画は台湾や中国でも公開されました。『マスカレード』シリーズは、現在のところ「イヴ」「ナイト」「ゲーム」の4作が発表されています(2022年現在)。
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まとめ
今回は東野圭吾のプロフィールやおすすめ作品をまとめました。この記事を読まれる方の中には「あの作品が入っていないじゃないか!」と言いたくなる方もおられると思います。しかしそこは、文章構成上の制約としてご理解ください。筆者も20年以上前から東野作品のファンですが、新作を読むたびにその制作意欲やアイディアに驚かされます。今年(2022年現在)も新刊が多数出版され、「ガリレオシリーズ」の映画も公開されるとのことですので、今後も東野圭吾から目が離せません。
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