年に一度の学校検眼。視力によりA~Dの4段階に分けられ、B以下になると眼科で再検査を受けるよう指導されます。去年までは全く問題がなかったのに、今年突然C判定と言われた!とショックを受けているお母さんも少なくないでしょう。子供の視力低下は大人と比べて非常に進行が早いので、短期間であっという間に悪くなってしまうのです。
近年、子供の近視は増加の一途をたどっています。平成26年度の学校保健統計調査(文部科学省)では、裸眼視力が1.0未満の子供は、幼稚園:26.53%、小学校:30.16%、中学校:53.04%、高等学校:62.89%という結果が出ました。調査を開始した昭和54年と比較すると、視力が低い子供が全体的に増えており、特に幼稚園や小学校の小さい子供が視力を落としていることが問題視されています。
子供の視力が悪くなっていることが分かれば、まず眼科にかかり、眼鏡が必要かどうかの診断を受けますね。でもできれば我が子に眼鏡をかけさせたくない…と考えるのが親の心情。そこで目に入るのが「視力回復トレーニング」です。
子供の視力低下はいつ起こるか分かりませんので、今は心配ないと思っている方も、視力回復トレーニングについてぜひ知っておいてください。
視力回復トレーニングとは?
視力回復トレーニングは、眼科で行う方法と、民間の視力回復センターに通う方法、自宅で機器を使用したり、体操を行う方法があります。子供の視力低下の主な原因として挙げられるのが、「毛様体筋」と呼ばれる、目の水晶体を調節してピントを合わせる筋肉の緊張です。視力回復トレーニングには様々な方法がありますが、どれも毛様体筋の緊張を和らげることを目的としています。
視力回復トレーニングには以下の種類があり、視力低下の進行度や原因に応じて選択・組み合わせて実施されます。
遠方凝視訓練
最も有名な視力回復の方法。遠くの一点に目標を定めて、意識してじっと見つめることで、近くばかりを見て凝り固まった毛様体筋を緩めます。
室内凝視訓練
遠方凝視訓練が室内でも行えるように、ランドルト環(視力検査で使うCマーク)を用いて改良した方法。
雲霧法
眼科等の医療機関で採用されている視力回復トレーニング法の1つ。目をピントが合わない状態で一定時間おき、毛様体筋の緊張をほぐします。『ワック』と呼ばれる機械を使用したり、目薬を使用したり、度が合わない眼鏡を装着して行います。
水晶体体操法(遠近体操法)
遠くと近くを交互に見る体操。毛様体筋が動いて血液循環が良くなり、筋肉の緊張を弛緩させることができます。
超音波治療器
超音波を一定時間目に当てて、目の周囲から内部まで適度にマッサージする方法。筋肉の凝りを取り除き、血管の流れを良くする効果が期待できます。
通電治療
眼周囲に弱い電流を流して刺激を与え、毛様体筋の緊張を緩和し、視力回復を促す治療法。新しい手法であるため、採用している眼科はまだ多くありません。
視力回復トレーニングは効果がある?
子供の目は成長過程にあるため、視力の低下が早いだけではなく、回復しやすいと言われていますが、実際は視力回復トレーニングの効果には差があります。軽度の近視であれば回復する症例も多いですが、強度や中程度の近視、先天的な近視や、目の見る力そのものが低い弱視などには充分対応できないことがあります。トレーニングの効果については懐疑的な医師もおり、眼科医の意見が分かれているのが現状です。
視力回復トレーニングは短期的なものではなく、ある一定期間根気よく続ける必要があります。そのため授業中黒板の字が見えないなど、すでに日常生活において不便が生じている場合は、眼鏡が必要になります。また併せて近視にならないための生活改善を行っていかなければなりません。
視力低下を防ぐために…まずは早期発見
子供の視力低下は進行が早いので、検査が1年に一度では早期に発見することが困難です。学校検眼とは別に、定期的に眼科で視力検査をすることをおすすめします。眼科では、視力だけではなく、近視の進行度を表す「屈折度数」を調べてくれますので、今視力低下が進んでいるのかどうかが分かります。
また視力検査の他にも、日常生活において子供が次のような様子を見せたら、視力の低下を疑いましょう。
- 時計やカレンダーなど、いつも同じ場所にあるものが見えづらそうにする
- テレビを近くで見ようとする
- よく転んだり、物にぶつかったりする
- 眼を細める
- 眼や頭が痛いと言う
- 顔を左右に動かしたり、眼を見開いたりする
- 飽きっぽく、イライラする
生活習慣を見直すことが大切
いくら視力回復トレーニングを行っても、近視になりやすい生活習慣を続けている限り、視力低下を免れることはできません。まずは子供の近視の原因を見つけて改善することが大切です。例えば以下のような点に注意して、子供の目に負担をかけないよう心がけましょう。
- ゲームや読書など、近くを見つめる作業が長時間続いていないか
- 部屋だけでなく、手元の明かりが十分であるか
- 椅子の高さが合っているか:机とおへその高さを合わせると良いでしょう
- 学習机を壁につけていないか:視界が遮られるため、正面に窓を持ってくるか、部屋の中央に向けて設置すると目を休めやすい環境が作れます
- 寝転がって作業していないか
- 外遊びなど、遠くを見る機会が減っていないか
すぐに取り入れたい、目に良いこと
生活習慣の改善に加えて、すぐに取り入れることができる、目に良いことを4つご紹介します。
目の休憩時間を作る
10~30分間テレビを見たり、読書・ゲーム等を行ったら、10~30秒遠くを眺めて目を休憩させます。ただ遠くを見るのではなく、裸眼で見える範囲の最も遠い所を、リラックスした状態で眺めるとより効果が高くなります。近くを見続けることで生じた目の疲労をほぐしてくれます。
目に良いとされる栄養素を摂取する
カルシウムは、眼球の形成、毛様体筋の働きに不可欠な栄養素です。積極的に摂取して、さらに吸収をよくするために日光を浴びて体内のビタミンDを増やしましょう。またビタミンA・アントシアニン・ルテイン・DHAも目に良いと言われています。
- ビタミンA:レバー、人参
- アントシアニン:ブルーベリー、さつまいも、黒大豆
- ルテイン:ほうれん草、ブロッコリー
- DHA:アジ、イワシ、ししゃも
に多く含まれていますので、日々の食事に取り入れてみてください。
食べ物をよく噛む
毛様体筋を鍛えるのに、「噛む」ことが有効であることが分かってきています。良く噛んで食事をすることで、視力低下を阻止しましょう。
目を温める
寝る前に温かいおしぼりを目に当てたり、まぶたを閉じて日光浴すると、目の周りの血流が良くなり、毛様体筋の緊張が和らぎます。
視力がほぼ完成するのは6歳前後と言われています。小学校低学年までは、特に生活習慣に気をつけて、視力の低下を防ぎましょう。今はコンタクトレンズやレーシック手術など、大人になってから行える視力矯正の選択肢も増えていますが、裸眼での視力はやはり一生の宝物です。親として、できる限り子供の視力を守ってあげたいですね。
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